第5話 転生前の最後の言葉
日常が突然、デスゲームになってしまった私。
憂鬱を通り越して、鬱になりかけました。
今まで何も考えずにお腹を満たしていたのに、毎食小麦が入っているかどうか考えながら食べないといけないのですから当然です。
そして、それを見誤れば命の危機におちいる。
医師は『まあ、あまり心配しすぎず何かあったら救急車で来て下さい』といって安心させてくれましたが……。
発症すると、苦しいんですよ!
思い出すと怖いんですよ!!
私の場合、気道が塞がりはしなかったそうなのですが、蕁麻疹が体の表面に一気に発生することで血管が拡張し、それに伴い急激に血圧が下がってしまいました。
血圧が一気に下がるとどうなるか?
体に血液を送るために心拍がとても早くなって息苦しくなります。
蕁麻疹がおさまらないことには、血圧が安定しないので貧血のように目の前が暗くなって見えなくなる。
「このまま意識がなくなったら、もう二度と目が覚めないんじゃないの? 怖い。怖い。私、死んじゃうのかな??」
と頭の中でぐるぐる考えていました。
その怖さといったら例えようもないです。
人間って死を目の前にしたときどんなことをいうと思いますか?
私は、救急車に同乗した母親に息切れしながらずっと謝っていました。
「心配かけてごめんね。急にこんなことになってごめんね。何もできなくてごめんね……」
逆縁の不幸で親を泣かせるかもしれない、とそればかりを悔やんでいました。
自分の人生とか、やり残したことがあるとかそういうんじゃないんですね。
人間というのは『いい人生だった』と言い残して死ねるものだと思っていました。
けれど、死はいつ突然やって来るかわからない。
そして、多くは私のように何も言い残せない。
つらい記憶というのは、薄めたり、忘れたりしないと前に進めないので救急車に乗ったときのことは、今ではだいぶ記憶が不鮮明になってきています。
それでも、母に謝ることしかできずに情けなかった気持ちだけは忘れることができません。
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