2-6 ハンターと呼ばれる集団
「まずアラン、お前を銃撃した犯人だが……その正体の目星がついている。二つの情報のうち、一つ目がこれ」
「何だと?」
意外な切り出しに、アランは目を見開いた。あの銃撃の後、冒険者達が総出で犯人を探したが、その痕跡ひとつすら見つからなかったのだ。
「犯人はおそらく、『
ハインツは指を一本立てて見せ、密やかにその名を告げた。その馴染みのない言葉に対し、ルビィが疑問を差し込む。
「
「そりゃそうだ。奴らは秘密結社みたいなもんで、その存在は都市伝説扱いされてきた。でも最近、実際に動き出したという情報を、俺は掴んでいた――――そして事実、お前が銃撃された。アラン」
アランは自分の肩の銃創に手をやった。魔法治療のお陰で傷はほとんど塞がっているものの、なおも痛みがある。
「その
「そうだ。
「全員が?」
アランは思わず聞き返した。銃というのは、王侯貴族のような存在だけが手にできる希少なもの。一般人が簡単に持てるような代物ではない。それを、全員が所持している?にわかには信じられない話だ。
「そう。しかも、構成員の貴賤は様々だとされている。全体の人数は、未知数だが……」
「一体、どうやって……」
「恐らく彼らは、銃の『レシピ』を所有している」
「『レシピ』……自分たちで生産しているということね……とんでもない話だわ」
ルビィは口元に手を当てて考え込んだ。ルビィ自身も銃の『レシピ』の欠片を入手していて、自分用の特製の銃を自作したという経緯がある。
ハインツは声を潜めたまま、話を続けた。
「奴らの思想はバラバラ、身分もバラバラだが、たった一つの共通した目的があるそうだ。それは……『神狼を殺すこと』だ」
「は……?」
アランは今度こそ、言葉を失った。寝耳に水だ。
「神狼、を……殺す……?それは……俺だけじゃなく、兄の金狼の方も、って意味か?」
「そうだ」
ルビィが横から声を上げた。
「それって……中央教会に、真っ向から喧嘩を売る行為じゃない!」
「だから秘密結社なんだよ」
神狼を殺す――――それは言うなれば、神への叛逆に等しい。禁忌とも言える行為だ。
「ちなみにこれはオマケの情報だが…教会の過激派が、ハンターに接触した形跡がある」
「!」
「お前……アランを消すって目的が、共通してるからな。奴ら、十中八九、手を組んでるぜ」
「とうとう手段を選ばなくなったということか」
「今回の襲撃も、中央教会から情報を得た上で行った可能性があるわね。はあ……過激派だけでも、厄介なのに……」
ルビィは頬杖をついて、ため息を吐いた。しかも今回の襲撃に用いられた弾丸には、神経毒が仕込まれていた。
「今回の『毒』……かなり特殊な物だったわ。銃の生産といい……
「そういうことだ。ここまでとは俺も想定外だったけどな。こうやって襲撃されるなら、先に『情報』を渡せば良かった。それはすまない」
「お前が謝るようなことじゃない」
アランははっきりと否定した。
「今回は想定外のことが多すぎた。しかし、今こうして貴重な情報を与えてくれたこと……感謝する」
「アラン、お前ってさあ……不器用だけど、良い奴だよな」
ハインツはからりと笑う。アランは照れたらしく、そっぽを向いてしまった。
「とにかく、
「それはそうね。銃が相手となれば、索敵範囲を広げて警戒する必要があるわ」
「で……この情報を受けて、だ。俺は思ったわけ。『そもそも神狼って何なんだ』ってな」
「…………それは…………」
アラン自身にもわからないことだった。教会が布教に使っている聖書の、原典にある情報以上の知識を、アランは有していない。
「世界に沢山いる種族の中で、何故『神狼』だけが特別扱いされる?そもそも『神狼』はいつ、どこから発生した?何故、一世に一人しか生まれないんだ?」
「…………わからない」
わからない。自分のことなのに。疑問に思ったことすら、なかったのが不思議だ。まあ、今までのアランは生きるだけで精一杯で、自分のルーツに興味を持つ余裕などなかったとも言える。
「そこで、二つ目の情報だ。これは、『神狼』のルーツに関わる物だ」
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