第6話

 学校が終わると昨日のように5人で帰る。


 そうして、全員が別れた後、家に帰った俺は月の家に向かった。


 昔はよくいっていたなーと思いながら、懐かしい道のりを懐かしみながら歩いていると、記憶だけで到着するとそこには変わらず月の家があった。


 少し深呼吸をしてから、インターホンを押す。


 すると、「はーい」という声がして、扉が開くとそこに現れたのは月のお母さんだった。


「あら!もしかして、司くん!?月から聞いてるよー!こっちに戻ってきたんだね!」と、暖かむかえてくれる。


「あっ、お久しぶりです」と、ペコリと頭を下げる。


「入って入って!リビングで待ってて!月を呼んでくるから!」と、流れるまま家に入り、リビングのソファに座る。


 見渡すと懐かしいものもいくつか並んでいた。

幼稚園で作ったマグカップとか、幼稚園時代に撮った5人の写真なども変わらずリビングに置いてあった。


 そうして、リビングと隣接している襖で仕切られている部屋の隙間が少し空いていた。


 気になったので、近づいてこっそり覗くと、そこにあったのは男の子の遺影だった。


 そうだ。確か、月には弟が居て...。


 その瞬間、勢いよく階段を降りる音が聞こえて、急いでソファに戻る。


 すると、慌てながら月がやってくる。


「ど、どうしたの!?つ、司くん...//」と、髪を整えながらやってくる。


【挿絵】

https://kakuyomu.jp/users/tanakamatao01/news/16818093088407263088


「あっ...うん。ちょっと話したくて...」というと、お母さんがいやらしい笑顔を浮かべて、「あー!おかあさんーようじがあったんだー!」と、棒読みをして、俺にウィンクをして家を飛び出すのであった。


 相変わらず、月のお母さんとは思えないほどはつらつで元気なお母さんである。


「あはは、ごめんね...うちのお母さん...変わらないでしょ?」


「そうだね。確かに変わってないね」


 そのまま、リビングでお母さんが出してくれたお茶とお菓子をいただく。


「...」「...」


 お互い特に話すわけではなく、無言の時間を過ごす。

昔からそうだった気がする。

いつもは5人で騒がしく遊んでいて、2人になると喋らないで、けど離れずそばにいた。


 無言の空間でも決して気まずくはなかった。

むしろ、今思えばあの頃の自分はどこかみんなに合わせていただけで、本来の自分は大人しい方だった気がした。


 そんな沈黙を破って、月のほうが話し始める。


「...司くん...大人になったよね」と、ぽつりとつぶやいた。


「...大人...。まぁ、プラスの方向で言うならそうかもね。けど、どっちかというと、インキャになった言う方がしっくりくる気がするけど」


「...そうなのかな?...でも、変わってたからちょっとびっくりした。...ううん。羨ましいなって思っちゃった。私は変わってないから...」


 俺は少なくても変わってなくて安心した。

これで、ピアス開けて金髪にして俺のことなんて覚えてなかったら、多分一生寝込むぐらいに落ち込んでいたと思う。


 あの頃のまま大きくなっていて...だからこそ、あの時の感情がまた湧いてきたのだ。


「...話っていうのは...その...あの時言えなかったことを言いにきたんだ」


「...言えなかったこと?」


「俺...俺...その...月のことが好きだったんだ。...ううん、今も多分その気持ちは変わってないと思う」


 そんな突然の告白にいつもより顔を赤くする月。


「そそそそそ、そうなんだ...//」


「...うん。それを伝えたくて...来た」


 ブサイクな告白だ。今の自分にふさわしいほどに。


「...そっか...。き、気持ちは嬉しいし、私も...司くんのこと...好きだよ?」という言葉に思わず俺の心は踊った。


 でも、月の顔は何かを言いたげだった。


「...け、けど...ごめん。気持ちには答えられない...。私は...みんなの気持ちを知ってるから。...みんながどれだけ司くんのこと好きで、今でも好きかを知ってる。...だから、ごめん。私は...司くんと付き合うことより、みんなと...ぎくしゃくしちゃうほうが嫌だから...」と、そう言われた。


 そんな言葉を聞いて思わず、口を噛み締める。


「...そっか。ごめんね。そうだよね」


 今回は明確に気まずい無言の空気が流れる。


「...帰るね」


 そう言って俺は家を後にした。


 過去の清算はできた。

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