転生亡国皇子の魔族絶滅計画

竹垂雫

第1話 帝国皇子の責務






 アルゼル帝国。かつて栄華を極めた大陸の覇者。


 そんな帝国の灯火は、侵略者によって消されようとしていた―――







♢♢♢




救世歴1722年

アルゼル帝都近郊にて






 アルゼル帝国第三皇子である『アルフレード・アレクシオス・アルゼル』は、帝都近郊の平野で侵略者と交戦していた。




「アルフレード殿下!! 最終防衛陣が突破されました!!」


「やはり、俺じゃ止められないか……!」


「もう間も無くここまで到達するかと!! 撤退を!!」


「……いいや、俺がここで退いたなら、いずれ帝都に魔族どもの刃は届く。ここで食い止める!!」


「……はっ!!」





 すまないな。


 彼にも家族はいるだろうに。


 こんな無茶な指示をされても困るだけだろう。


 しかし、ここで食い止めるために1人でも多くの人材が必要だ。


 とは言え、この状況の打開策なんて無い。やらないよりかはマシという程度のことしか出来ない。




「魔道士部隊に命令!! 敵を火魔法で焼け!!」


「ははっ!! 総員、魔法用意!!」




 俺の命令を受けた魔導隊長の言葉に従い、魔道士たちが準備をする。



 しかし、遅い。



 人間が魔法を使用するには、魔族の数倍時間がかかる。


 だからこそ帝国はここまで劣勢になったし、帝都まで迫られている。


 もはや、打開策はない詰みの盤面といえよう。




 しかし、俺は。


 皇族として。


 軍を率いるものとして。




「―――退くわけにはいかないっ!!」






―――轟ッッ!!






 前線で爆発が起き、火の手があがる。



 そして、その爆発に呼応するように強風が吹く。



 その強風により炎が燃え広がり、あっという間に前線は灼熱地獄と化した。




「な、なんだぁ!?」

「いやだぁぁあぁぁあ!?」

「あぁ゛づぅい゛ぃ―――!!」

「だすけぇくれ゛ぇぇぇえ!!」

「なんでこんな゛ぁ」

「どうか、どうか家族は……」

「父上ぇぇえ!!」

「いやだ! うわぁぁぁあ!!」

「クソったれがぁぁぁあ!?!?」

「呪ってやるぞぉぉぉ!!」

「なんで俺を前線に゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!!」

「俺は死にたくなぁぁああい!!」

「なんで俺は帝国なんがにうま゛れたんだぁぁぁあ!!」




 前線、いや、軍全体が阿鼻叫喚に包まれる。



 困惑する者。


 余りの熱さに絶叫する者。


 助けを叫ぶ者。


 家族を案じる者。


 憎悪を叫ぶ者。


 帝国に産まれ落ちたことを後悔する者。




「―――なんでこんなことに」




 アルフレードの側近の1人が呟いた。


 それを皮切りに、上官たちも恐怖に飲まれ狂いだす。




「あ……あぁ……ぁぁぁぁ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」

「ぃやだぁぁぁぁあ!!」

「帝国はもう……」

「あはは……神の声が聞こえてきました……イヒヒィヒヒイイイヒヒ」

「ジリアァァァア!!」

「愛してるよメアリー……」

「こんな負け戦やってられるか!! 俺はヤツらに降るぞ!!」




 発狂する者。


 絶望する者。


 余りの恐怖に狂う者。


 前線にいるであろう息子の名を叫ぶ者。


 最後に愛を詩う者。


 敵に降ろうとする者。



 前線と大して変わらない混乱様に、いや、責任がある分前線より酷い混乱様に俺は打つ手もない。





「本当に……なんでこんなことに……!!」




 俺は、絶望と怒り両方が含んだ声を発する。




「俺は、祖国である帝国を護るはずだった。こんなはずじゃなかった。なのに……」




 膨大な魔力量。


 圧倒的な魔法の適性。


 高い士気。


 有能な指揮官。


 人智の及ばぬ力。




「ああ、なんて理不尽で―――」




 羨ましい。




 その言葉を発す前に、アルフレードの頭部には一本の矢が突き立ったのだった。








――――――――――――――――――――――――――――――――――――


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