『ギャップライブアクション』~聖女みたいな保育士お姉さんと実写版ネカマの年の差ラブコメに裏切られるわけがない~
新米
第1話 冬のエアコンにはご注意を
朝のやわらかな日差しが差し込む中、保育園のバスが静かに街を走っていた。『ひまわり保育園』と書かれたバスの黄色い車体は、周囲の緑に映えて明るく目立つ。バス停に近づくと、数人の園児たちが元気よく手を振って待っていた。
バスが停車すると、保育士の近藤真紀の優しい声が響いた。
「おはよう、みんな。元気に登園しようね。」
園児たちは、小さなリュックを背負いながら順番にバスに乗り込んでいく。一人一人の顔には笑顔が広がり、期待に胸を膨らませていた。
「おはようございます!」
元気よく挨拶する声が聞こえる中、園児たちは自分の席に座った。
バスの中では、友達同士の会話や笑い声が溢れていた。
「昨日、公園で遊んだんだよ!」と話す子、「今日は何して遊ぶ?」と問いかける子、それぞれが楽しそうに話していた。
運転手が再びエンジンをかけると、バスは再び動き出した。外の風景が流れ、園児たちは窓の外を興味津々に見つめていた。
「見て見て、あれが僕の家!」と指をさす子や、「あの木、いつも見てるよ!」と話す子もいた。
やがて、バスは幼稚園に到着し、園庭のゲート前に停車した。園児たちは一斉に席を立ち、友達と手をつないでバスを降りていく。
「さあ、みんな、降りるよ!今日も一日、楽しもうね!」
真紀の声が再び響き、園児たちは元気いっぱいに幼稚園の門をくぐった。
外では、先生たちが出迎え、園児一人一人に笑顔で挨拶していた。
「おはようございます!今日も元気だね!」
園児たちは、今日も新しい冒険が待っていることに胸を躍らせ、楽しい一日を過ごす準備を整えたのだった。
季節は冬である。上空には、この季節の風物詩である気球が飛んでいる。
外では、雪が積もって子供たちが雪合戦をしていた。
私は、近藤真紀だ。二十二歳、保育士である。見た目は綺麗なお姉さん。園児からはお母さんと呼ばれるほど母性が溢れている。言い間違いではないことをあえて言おう。趣味はお酒だ。ギャップ萌えというものである。
真紀が働くひまわり保育園の園庭には、子どもたちの笑い声がいつも絶え間なく響いている。朝の光がやわらかく差し込み、まだ朝露が乾ききらない芝生の上に、子どもたちの小さな靴跡が点々と続いていた。小さな花壇には色とりどりの季節の花が咲き誇り、その色彩が園庭に鮮やかなアクセントを添えている。
真紀が「雪だるまつくろう!」と声をかけると、園児たちは一斉に目を輝かせて、好きな場所に走り出す。真紀は楽しそうに彼らを追いかけたり、隠れる場所を見つけるのを手伝ったりしながら、親しみやすいお姉さんというより、まるで気の置けない仲間のように過ごしている。
「マキ先生結婚して~。」
右側にいる男児が真紀のエプロンの裾をギュッっと引っ張って声をかける。
「ありがとう!十八年後も同じこと言えたら考えるね?私、アラフォーだけど。」
「アラフォーって何~?」
さらに、左側の女児が真紀に手をひきながら質問する。
「それはね……。」というと男児が言葉を遮った。
「それ知ってるよ!お母さんが昼どらぁ?で見ながら、『アラフォー……四十にはなりたくない』っていってたー。」
「みそじーってやつー?」
「それ三十じゃないのー。」
「サレづまってやつだよー。」
「にぃちゃんが、母ちゃんに、『ババァ!三者面談で四十なのに三十路ーって言ってんじゃねぇ!』っていったらぶたれてたぞー」
「……。」
真紀はニコニコしながら、話の脈絡のないが盛り上がっている園児たちの話を聞いていた。
園庭の隅には、大きな滑り台とブランコがあり、子どもたちが滑り降りるたびに元気な歓声が空に向かって響く。その声に混じって、
「マキせんせい!」
子どもたちが真紀を呼ぶと、彼女はにっこりと笑顔で振り向く。園児たちが無邪気に抱きつくと、真紀も彼らをぎゅっと抱きしめ、まるで母親のように包み込む温かな表情を浮かべている。
日差しを浴びてキラキラと輝く園庭、元気に遊ぶ子どもたち、そしてその中で、
「マキせんせい!」
親しみ深く呼ばれるたびに、真紀の心もさらに温かさに満たされていく。
保育園は、子どもたちの明るい声と小さな足音で賑わっている。真紀は、色とりどりの遊具や絵本が並ぶ広い室内で、一人ひとりの子どもたちに目を配りながら、にこやかな笑顔を絶やさない。部屋の奥からは、静かなピアノの音が聞こえてきて、朝の落ち着いた雰囲気に包まれている。
真紀は、うまくうたえず、周りに笑われて、少し泣き出しそうな子のそばにしゃがみ込み、柔らかい声で言う。
「大丈夫だよ、一緒に歌おう?」
「うん……。」
安心した子どもが小さな手を差し出すと、真紀はその手をそっと握り、少しずつ気持ちが和らいでいくのを見守る。その穏やかな姿は、まるでお母さんのようで、周囲の子どもたちも次々に「マキせんせい!」と駆け寄ってくる。
工作の時間になると、子どもたちが小さなハサミや色紙を手に取り、それぞれ思い思いの作品を作り始める。真紀は
「ここをこうすると、もっと素敵になるよ。」
「おぉーすげー!」
優しくアドバイスし、時には一緒に手を動かしながら、子どもたちの想像力が羽ばたくのを手助けしている。ふと見ると、子どもたちの小さな手には色とりどりの絵具がつき、笑顔で真紀を見上げてくる。
昼食の時間には、賑やかだった室内が少しだけ落ち着き、真紀も子どもたちと一緒に食卓を囲む。子どもたちは、カレーライスや野菜の盛り付けに歓声を上げ、それぞれの席で「いただきます!」と元気よく声を揃える。真紀は、そんな彼らを見守りながら、食べることの大切さを教えたり、好き嫌いに挑戦する勇気を応援したりしている。
「おれピーマンきらーい。」
「じいちゃんがいってたぞー。好き嫌いよくないって。」
「なんでー?」
「昔はお腹いっぱいご飯食べられないことが当たり前だったんだってさ。」
「よくわからない。」
「食べ残すと……鬼がくるっってばあちゃんいってたぞ。」
「うぅ……。頑張る。」
「がんばぇ、がんばぇ、がんばぇぇ~!」
「……んぐ。……食べたどー!」
「おぉぉぉぉ!」
拍手喝采が巻き起こっていた。
一日が過ぎるごとに、真紀はそれぞれの子どもたちの成長や小さな変化を感じ取り、笑顔と優しさでその毎日を彩っている。その穏やかで温かな風景は、彼女にとってかけがえのない時間であり、子どもたちの心にとっても、真紀の存在が安心と楽しさの源であることが感じられる場所だった。
同期の細川美幸が声をかけてきた。ショートヘアーで活発的な女性である。二十二歳。趣味は、サバゲ―である。
「ねぇ、真紀?明日休みだし、みんなで今日飲みに行かない?」
「いいねー!行こう!」
「園長奢りでー!」
「いいわねー。ごちそうさまです。」
すると、先輩の小林智子がノリを合わせる。ロングヘアーで落ち着きのある女性である。二十六歳。趣味は将棋である。
「ちょっと待て。なんで私のおごりなの?」
声の低い黒縁メガネのふくよかな男性、園長の加藤正夫がつっかかる。三十歳。趣味は、写真である。
「園長、お金もってるし。」
「給料未払いとかさせたくないし。」
「パパ活させないためよ。」
「おい、私のイメージひどすぎるだろう。」
「ていうことで、行きましょう!仕事終わったら、みんなでいきましょう!」
「おぉぉぉ!」と真紀、美幸、智子が手を挙げて合意する。
「……私。おごり確定?」
正夫の言葉に誰も答えてくれなかった。
「誘われないだけマシだよね。うん。」
正夫は自分に言い聞かせるように呟き、項垂れた。
真紀が同僚たちと訪れた居酒屋は、木の温もりを感じるどこか懐かしい雰囲気に包まれていた。赤提灯が揺れ、店内には炭火の香ばしい香りが漂い、壁には所狭しと並ぶメニューの短冊が貼られている。カウンター越しに笑顔の店員が注文を取っていき、にぎやかな声が飛び交う。そこには、真紀の居心地の良い隠れ家のような雰囲気が広がっていた。店の名前は、『ブラックバー』。
決して、いかがわしくない健全な店である。
「あら、まきちゃんいらっしゃい。」
店長の黒田和也が出迎えてくれた。
「こんばんは、黒ちゃん。今日は他のみんなもつれてきたよ。」
「ゆっくりしていってねー。」
「はい!」と他の皆もワクワクしていいるようだ。
黒ちゃんは、真紀に耳元で声をかける。
「かわいい子たちじゃな~い!あのメガネの男性ちょっと好みかも……。」
「えー。やめときなよー。あの男は。」
「ちょっと、悪いくらいがいいのよ。」
そこに、正夫が声をかけてきた。
「席ここでいいなー?早く座れよー。」
「あ、はい!今行きます。じゃ、黒ちゃん今日もよろしくね?」
「えぇ。任せない。あと、サービスするから、あの眼鏡と接点つくってよ?」
「えぇー。考えとく。」
―加藤正夫、電撃スクーブのお知らせ―
皆さんもうすうす気づいているだろう。彼、黒ちゃんは、ボーイズラブ。ゲイである。
この作品は多様性を重んじる作品です。彼らのこれからに温かい目線で見守ってください。
「うう……。急に寒気が。風引いたか?」
正夫は、自らに置かれた状況に気づいていなかった。
テーブルの上には、すでに串焼きや揚げ物の盛り合わせが次々と並び、ビールのジョッキがいくつも置かれている。冷えたジョッキを持つと、真紀は嬉しそうに「かんぱーい!」と声をあげ、同僚たちと笑いながら乾杯の音を響かせた。その瞬間、ビールの泡がぷくぷくと弾け、彼女の喉を潤す冷たさが心地よい。
「くぅー……これのために毎日生きてるもんよ。
真紀がいい飲みっぷりだ。
「ほんとそれ。」
智子はちょびちょびと飲んでいる。
「モンスターペアレントになりやすい時期の保護者と戦う日々にはこれがないとやってけないわ。」
美幸の言葉に、真紀と智子はうなづいた。
「すまん。私トイレに。」
正夫が離席しようとする。
「トイレに行っといれ!」
「うぜぇ。」
酔いが少しずつ回り始めたころ、真紀は同僚たちにオヤジギャグを飛ばし、苦笑いを誘う。周りからは「マキ先生、また出た!」とからかわれるが、真紀は気にせずおおらかに笑い飛ばす。その無邪気な姿に、同僚たちは思わずつられて笑顔になり、店内に賑やかな笑い声が広がっていく。
彼女は酔うと、うざ絡みをするタイプなのだ。
「もも、ネギま、レバー、おまたせしました。」
「ありがとう。バイト君!」
「ごゆっくりお過ごしくださいませ。」
バイト君が礼儀正しく一礼してこの場を去る。
料理が運ばれ、ジョッキが空になるたびに新しいビールが注がれる。真紀の頬もほのかに赤らみ、まるで仕事の疲れをすべて忘れたかのように、リラックスした表情を浮かべていた。
居酒屋の一角、賑やかな雰囲気の中で、真紀と正夫はテーブルを囲んでいた。真紀はすでに少し酔っており、顔が赤くなっていた。彼女はグラスを手に取り、正夫に向かって身を乗り出した。
「ねぇ、正夫さん、なんでそんなに太ってるの?もっと運動しなよ!」
真紀は笑いながら言ったが、その声には少しのしつこさが感じられた。
正夫は困ったように笑いながら答えた。
「いや、ストレス太りだから。」
「うそだぁ!いつもお昼にシュークリーム食べてるじゃん!」
真紀はさらに身を乗り出し、正夫の肩を軽く叩いた。
「自分へのご褒美がないとダメなのです。」
正夫はすまし顔を浮かべた。
「アハハ!その顔うざっ、アハハ!」
真紀は指さして笑っている。
正夫はドヤ顔で言う。
「わかったよ、明日からダイエットするよ。減量に成功したら、いい人紹介してくれよ。」
「できるものならどうぞー!」
真紀は満足げに笑い、再びグラスを口に運んだ。
その後も真紀は正夫にしつこく話しかけ続け、正夫は困惑しながらも付き合っていた。真紀のうざがらみは続き、正夫は内心でため息をつきながらも、彼女の話に耳を傾けていた。
「園長なのにこの接し方よ。」
智子がお酒を飲みながら、美幸に言った。
「園長ってゆうても、上下関係気にしない人だし。」
「それもそうね。」
「よく三十歳で園長になれたよ。」
「見た目はあれでも、優秀な人だから。」
「アハハ!そうかなー。」
美幸と智子も上機嫌そうだった。
この夜がずっと続けばいいとさえ思うほどに、真紀はこの賑わいの中で、束の間の安らぎを感じていた。その後、酔っぱらって帰宅した。真紀はベッドに寝っ転がる。
「たーでぇーまー!」
すると、マンチカンの『ポン吉』がすりよってきた。
「ポン吉~。今日も頑張っだよぉー。」
ゴロゴロとなくポン吉。
「さむいさむいー。エアコンつけよう。」
ピッと空調をつける音がする。
「おやすみなさーい。」
真紀は風呂は朝でいいと思い眠ってしまった。しかし、エアコンの空調のリモコンは……冷房だった。
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