真実

おばあさんに、また会いに行きました。


竹本ミヨコが死んだのは、10年くらい前のことだ。

今回、おばあさんはそう言いました。


最初に言ったことと矛盾しています。

わたしには、今回語られた情報が正しく思えます。


はじめの通り、「わたしの産まれる前に竹本ミヨコは死んでいた」というのが真実だったとすれば、わたしをさらった竹本ミヨコは、亡霊だということになります。

それはないと思います。


彼女は生きていました。絶対にそうです。体温を今でも覚えています。


わたしは、2つ質問をしました。


竹本ミヨコという名前は仮名か?

────改名した名前です。


なぜ矛盾した言動をしているのか?

────自分で自分がわからない。


竹本ミヨコという名前が改名したものだったことは、衝撃でした。


そのことについては後で考えるとして、持論があります。


おばあさんははじめ、「あまり詮索するな」とわたしに警告していました。

これは、自分自身、竹本ミヨコに危害を加えられたからなのではないでしょうか。


以前記した通り、竹本ミヨコにさらわれた、などという経験談は、いくら探しても出てきません。だから、「関わるな」「詮索するな」という警告も、見たことがありませんでした。


しかし、おばあさんはわたしに警告したのです。


おばあさんが竹本ミヨコの脅威を知っていたからこその行動だと言えます。


また、おばあさんの言動の矛盾。


わたしは以前、竹本ミヨコに危害を加えられたエピソードがどこにもないのは、「危害を加えられた人間が、死ぬか、廃人になっているから」と予想していました。


もしかしたら、おばあさんは廃人になりかけているのかもしれません。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る