名前

竹本ミヨコ、という名前は、かなり広まっています。

わたしは当初、仮名ではないかと疑っていました。しかし、「竹本ミヨコを見た」と語る人々の情報を調べているうちに、そう思えなくなりました。

わたしはミヨコ、という言葉。

「竹本ミヨコを探しています」という呼びかけにこたえてくれる方々が、たくさんいること。


この名前が何人もの人に知られているのであれば、やはり本名なのではないでしょうか。

なにより、おとぎ話を語るほどに可愛がってくれたわたしに名乗った名前が、偽物だとは思えないのです。


おかしいですね。自分をさらった女なのに。自ら逃げてきたのに。

会いたくてたまりません。


こう思うようになったのは、数年前です。

ふと思い出したのです。


話を戻します。

竹本ミヨコの話はかなり広まっています。

そこに気になる点がありました。


わたしのようにさらわれたというエピソードや、危害を加えられた体験談が、全く見つからない点です。

竹本ミヨコにとって、わたしは特別なのか。わたしとトヨミが似ている、という推理は、正しいのかもしれません。


しかし、もうひとつ仮説があります。

わたしと同じような目にあった人は今までもいたが、みんな死んでしまった、という仮説です。

これもありえます。

死んだのではなく、廃人になった、という可能性もあります。


後者の説が正しければ、わたしも死んでしまうのでしょうか。廃人になるのでしょうか。


竹本ミヨコに会いたい。

この気持ちも、壊れる予兆でしょうか。

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