×××地区の家

琴村トヨミが消えたという×××地区に行ってみました。

結論から言うと、手がかりらしきものを見つけることに成功しました。


×××地区の中央通りから少し歩いた先にある雑木林を歩いている時に、見つけました。

その林の奥の方には、空き家があります。

なにかないかと空き家に近づいてみたところ、「琴村トヨミを探しています」というポスターが落ちているのを発見したのです。

もうボロボロで、色もあせ、顔の部分は破れていました。

琴村トヨミの年齢は、誘拐された当時のわたしと同じでした。ネットで見つけた情報だったこと、幼少期の記憶であることから、信頼性は不足しているかなぁと思って書いていませんでしたが、ポスターに記されており、真実だと確信しました。

竹本ミヨコは、わたしとトヨミを重ね合わせていたのかもしれません。

しかし年齢と性別が同じなだけなら、そんな子いくらでもいます。わたしだけを狙う理由にはなりません。そもそも竹本ミヨコがわたしの年齢を知る術などないはずです。

身代金目当てで無差別に誘拐しただけだと考えるなら、わたしのことを「トヨミ」と呼び、おとぎ話をする、なんてことはないと思われます。竹本ミヨコは、何らかの理由により、明確にわたしを狙っていた。そうとしか考えられません。

もしかしたら、トヨミとわたしは見た目が似ているのではないでしょうか。

ただし、トヨミの見た目はわかりません。

いくら調べても、出てこないのです。

「琴村トヨミ誘拐事件」の情報は、「琴村トヨミの顔」だけこの情報化社会から消えてしまっているのです。

ポスターも、破れていました。


わたしは、なにか手がかりを、という一心で、空き家の中に入りました。

壁一面に、こう書かれていました。

「母胎にいながらなぜ掘りおこすのか?」

竹本ミヨコがわたしに残したメモに書いてあった言葉です。

この空き家に、竹本ミヨコが入ったことがあるのではないでしょうか?


壁を見ていると、ひどい頭痛に襲われ、立っているのも苦しくなったので、なんとか写真を一枚撮って、重い足を引きずりながら、空き家をあとにしました。


家に帰って、写真を見返しましたが、あの文字は写っていませんでした。

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