第42話 動機
「嘘でしょ……」
「全部、本当のことよ。アマテラス」
世界を魔物や『アクニンダン』の脅威から人々を守っているはずの組織――『魔法庁』。
しかし蓋を開けてみれば、私が所属していたこの組織は、たった数人の魔法少女が世界を意のままに操る為の隠れ蓑に過ぎなかった。
人類が未だに存続しているのは、「自分達の玩具が
そして一番の驚愕的な事実は、あの『アクニンダン』の首領である『ボス』が、元は目の前の魔法少女達の仲間であった――ではない。
もちろん、それもアマテラスのこれまでの常識をぶち壊すには十分な事実であった。けれど、『ボス』がたとえ仮初めであったとしても、平和を守る側から脅かす側に回ったのか。『アクニンダン』という悪の組織を立ち上げたのか。
その動機が、真なる世界平和の実現。もっと具体的に言えば、魔物に怯えることもなく、自分を含めた魔法少女なんか必要のない世界。
そんな絵空事を現実のものとするべく、仲間と袂を分かち、一人で戦い続けた魔法少女。
それが、『アクニンダン』の『ボス』の正体であった。
「……じゃあ、なんで『ボス』は『アクニンダン』の幹部の子達を洗脳してまで、一般人にまで被害を出しているの?」
私の口からは震える声で、言葉が溢れる。
私だけじゃなくても、この話を聞けば誰だって疑問を抱くだろう。
何故、魔物の脅威から人々を守ろうとしていた人物が、悪の組織を設立したのか。
「さあ? あの子って、昔から私達と馬が合わなかったし、良く分からないわ。ただ本気で世界平和を目指していて、私達から離れたと思ったら『アクニンダン』を創るなんて、おかしいわよね?」
一人の魔法少女が同意を求めるように尋ねてくる。
一見矛盾するような『ボス』の行動は、一応は仲間であったはずの魔法少女達にも分かっていないらしい。いや、彼女達の言動を見るに、仲間扱いするのは『ボス』にとって失礼になるかもしれない。
動機はどうあれ、悪の組織の親玉に気を遣う必要はない気もするが。
でも、結局『ボス』は一体何を考えていたのだろうか。
そんな私の思考を中断するように、先ほどまで喋っていた魔法少女は続けて口を開く。
「でも、あの子には感謝しているわ。魔物の相手だけじゃ飽きていたから、『アクニンダン』なんて面白い組織を創ってくれるし、そこの幹部達も魅力的な
聞き捨てならない言葉が言い切られる前に、魔法少女達の手元の端末から音が一斉に鳴る。その音に、彼女達は不愉快そうに顔を歪めながらも、端末を眺める。
不満なそうな表情は一転。全員が愉快げな表情を浮かべる。彼女達の一人が私に向かって話し出す。
「へえ……あの子も面白い手を打ってくるじゃない。流石に予想はしていなかったわ。魔法少女を
……アマテラス。今、『魔法庁』の本部は『アクニンダン』による襲撃を受けているわ。さっきの事実を知った上で、貴女は魔法少女として戦える? もちろん、拒否権はないけど、一応形として聞いてあげる」
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