買い物から帰宅すると、彼氏をNTRれた義妹が部屋で泣いていた。俺は妹を泣かした奴らに怒りの鉄槌を下す

白金豪

第1話 義妹の泣く声

 5月の初旬の金曜日の夕方。


「ただいま~」


 地元の高校に通う松脇亮まつわきあきらは、学校終わりに書店で買い物を済ませ帰宅する。


「うん? 」


 亮は玄関に足を踏み入れてから暫くして違和感を覚える。


 亮の帰宅時に必ず有る義妹の松脇和奏まつわきわかなの出迎えの挨拶が無かった。その上、夕方にも関わらず、リビングや玄関の電気は消えており、自宅の全体が暗かった。


「どうしたんだろ? 寝てるのかな? 」


 亮は不思議に思いながらも、普段の足取りで階段を上がり、自身の部屋に向かう。


 いつもの調子で2階に到着し、部屋に入ろうと試みる。


「くうッくッくッ。 ううッ 。うッうッ…」


 亮が自身の部屋のドアノブに手を掛けた瞬間、聞き馴染みのある義妹の泣き声が耳に届く。即座に耳にすれば泣き声だと分かるほどであった。


「和奏!! 」


 亮は異変を感じ、駆け足で移動し、ノックもせず飛び込むように和奏の部屋に入る。


 部屋では和奏が泣くのを抑えるように、ベッドの上でうつ伏せの状態で枕に顔を押し付けながら泣き声を漏らしていた。


「和奏!! 大丈夫!! 」


 亮は慌てた様子で和奏の下に駆け寄る。


「お兄ちゃん…。お兄ちゃん~~」


 和奏は兄である亮の顔を認識し、両目から大粒の涙を流しながら、叫ぶように悲しい声を上げる。そして、亮の胸に助けを求めるように勢いよく飛び込む。


「ど、どうしたんだ? そんなに大泣きして何か悲しいことが有ったのか!? 」


 亮は突然の和奏の行動に動揺しつつ、妹の身体を受け止め、心配する。


「うぐっ。ひぐっ。私の——」


 和奏は言葉を紡ぎかけた所で行き詰る。

 

「私の? 私のがどうしたんだ? 」


 亮は和奏の言葉の続きを確かめるために、安心させるように妹の背中をさすりながらも取り乱した声で尋ねる。


 亮にとって和奏の言いたいことが全く分からない。


「私の彼氏が寝取られちゃったの~~。うわ~~ん」


 和奏の悲痛な叫びが部屋中に響き渡った。

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買い物から帰宅すると、彼氏をNTRれた義妹が部屋で泣いていた。俺は妹を泣かした奴らに怒りの鉄槌を下す 白金豪 @shirogane4869

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