エロゲ世界でヒロインと交友が深まっていく。それでも僕はモブなんだろうか?
ヘイ
第1話 四人のヒロインと主人公
僕はモブである。
しっかりと自覚してる。紛れもないモブで主人公にはなれないと理解してる。そして、当然悪役としても主要人物にならない。
主人公の友人枠でもない。
因みに僕の名前は
いくら自分でも美形だって思っても、この世界ではモブなのだ。
この『
「……どう考えてもなぁ」
胃痛がしてきた。
ゲームをやっていた当初は推しヒロインとイチャイチャする為だけに遊んでた。まあ、目的のヒロインは攻略できて満足したから僕は放置してた。
でも主人公がいる事を考えると、そのヒロインも彼の攻略対象だ。
つまり、この世界は一瞬にしてBSSジャンルに早替わりするのだ。
「何のバチなんだよ……主人公、とまでは言わないけど、頼むから主要キャラにしてくれよ」
とは言っても、僕はそもそもとしてこの世界のヒロインと全く知り合いでもないんだからBSSなんていうのも烏滸がましいかもしれない。
「…………こっちだよね?」
前世の記憶が戻って確認したのは、この世界について知る事。
そして、学園の名前で『
僕も舞台である私立
「────うわぁああっ!!!? ど、退いて退いてぇ!!」
「え?」
突然の女の子の声、気がつけば僕の身体は撥ね飛ばされていた。
「ごふっ……!?」
「ご、ごめーん! 大丈夫!? でもボクも学校行かなきゃだからさ! 入学式あるし!」
「な、なん……」
なんつーヒロインだ。
これが
「……ふぎゃっ!?」
背中を踏まれた。
目が飛び出るかと思った。
「あ、ごめんなさい。こんな所で倒れているのだもの」
あの、そう言うならすぐ避けてくれれば良いんですけど。
「うぐっ、ぶ」
何でカーペットみたいにわざわざ上を歩いていくのか。
「…………な、んなんだ、あのヒロインたちは」
これ以上の事があっても困る。
僕の上を歩いて行ったヒロイン、
「僕は主人公じゃないのに」
というか、主人公との出会いもこんなラブコメチックじゃなかった。あとラブコメチックならもうちょい色気があって欲しい。
今の所、痛みしかないから完全にマイナスに振り切れてる。
「────ここ、どこ?」
推しヒロインの声が聞こえた。
僕が振り返ると短い黒髪のクールな印象の少女がスマホを持って立っていた。僕と変わらない年齢だ。
名前は
因みに言うと、彼女の主人公との初対面は通学路ではなく学校でだ。なので、ここで会った時点で僕は主人公ではないのだ。
「……大丈夫?」
「え!? な、何が?」
推しに声をかけられてしまった。
「いや、すごい服汚れてるから」
「だ、大丈夫だよ。ただ、ちょっと派手に転んじゃっただけだから」
「そっか。大変だね」
会話終わったー!?
「……あ、あのさ? 学校多分同じだよね?」
「そうかな?」
「制服! 同じ! 同じ制服! 栄聖学園だよね!?」
「あ、ほんとだ。汚れてるのに気取られちゃって。同じ栄聖学園生なんだ」
ぐぬぬ、そこもかわいいっ。
「それで、どうしたの?」
「いや一緒に行かないかなって」
「どうして?」
「道分かってないと思って」
ナンパ臭かったかな?
なんて僕が不安に駆られていると「いいよ」と答えが返ってきた。
「わたし、冬野美月。君は?」
「僕は平坂燿。学校行くまでの間だけだけどよろしくね、冬野さん」
そのうち冬野美月も主人公のヒロインになるだろうし。僕の事は綺麗さっぱり忘れるだろう。だから今だけはいい思いしてもいいじゃない。
この世界に来て推しに会えたんだから。
「ありがとね、燿」
「いやいや……」
って、いきなり名前呼び!?
て、訂正するのは勿体ない。そのまま名前呼びしてもらお。
「道に迷っちゃって」
「冬野さんってここら辺に住んでないの?」
「ここら辺だよ。最近一人暮らし始めたの。ただ学園までの道覚えてなくて」
「そっか」
「でも燿が居て助かったよ」
冬野ルートは大変素晴らしかったです。
特に冬野さんの家でのクリスマスのシーンはとても素晴らしかったです。一人暮らしだからと言って…………。
「家の場所教えるから迎えに来てくれない?」
「────────……………………はぇ?」
一瞬思考が吹っ飛んだ。
「なんで!?」
「? 道が分からないから?」
僕、主人公じゃないんだけど……?
「うん?」
声がちょっと漏れてたらしい。
「あ、あのさぁ、男の人にそう軽々と自分の住んでる場所は教えないものだよ?」
「燿は、男……?」
「男だよ!?」
彼女は僕の頭のてっぺんから下までを見て「ほんとだ」と納得したようにポンと手を打った。
「せめて、どこかで待ち合わせしてそっからとかにしておこうよ」
「そう? ならお願い。帰りに待ち合わせ場所決めよ」
僕は「分かったよ」と了承を返す。ごく普通に、自然に。当たり前のように会話をして。何となく流れで了承したけど。
「あれ……?」
僕ってモブだったよね?
何で帰りの約束までしてるんだろうか。
「どうしたの? 道迷った?」
「目の前を見て欲しい。そこに校舎があるね?」
僕の指摘で彼女は校舎を見上げる。
「あ、ほんとだ。ありがとう」
「まあ僕も同じ目的地だったし。僕の方から誘ったんだし」
役得感もあったから感謝したいのはむしろこっちの方。
「それじゃ、また後でね」
「あ、うん」
冬野は行っちゃったけど。
「一体どうなるんだろ」
僕のこの世界での役割は何だろう。
主人公はもしかして僕なのかも。だってもう三人とは会ってるわけだし。
「……って、冬野さん?」
「あ、燿。教室までどう行くの?」
「…………なんで?」
この子、本当に大丈夫なんだろうか。
「えーと、冬野さん。クラスは?」
「C組」
「……僕もだよ」
ゲームだとクラスまでは出てきてなかった気がするから。僕もここで初めて冬野さんと同じクラスだと分かった。
「同じクラスだ」
「そうだね。とりあえず行こっか」
冬野さんと一緒に教室に入る。
入った瞬間に朝に見た夏元と秋山が目に入ってくる。夏元は何だか申し訳なさそうな顔をして頭の上で合掌してる。秋山の方は、僕に気を向けず本を読んでる。
「…………はあ」
やっぱり居るのか。
『
「あ、冬野さ……」
って、もう席についてるし。
僕も大人しく席に着こう。
「ふぅ……疲れた」
朝から色々あったな。
友人枠ですらないのに。何で僕はヒロインにこんなに巻き込まれてるのか。今の所、僕を認知してるっぽいのは冬野と夏元だけど。
「大丈夫ですか?」
「ああ、ううん。気にしないで。僕が勝手に疲れてるだけだ……か、ら?」
「そうなんですね?」
この特徴的なピンク色の髪。
「まあ、うん」
何で隣の席に
本当に僕って主人公じゃないのかな? 勘違いしちゃいそうなんだけど。
「ごめんね、いきなり」
「いやいや、気にしないで! とにかく……えーと、僕は平坂燿っていうんだ」
「あ、私は
「うん、よろしく。春木さん」
ははは、何でもうこんなにヒロインと接点があるんだろ。
主人公はそこに居るのに。
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