告発原文09 再び襲われる?

3月7日、宵のことでした。兄が、しばらくわが家にきていて、そのあと自分のマンションのほうへ戻った、その直後でした。勝手口のすぐ外のほうで、何かがたんと大きな音がしました。室内で飼っている犬が、勝手口のほうへ向かって、ほえ始めました。それがなかなか止みません。5分、10分と経っても、そちらに向かってほえ続けているのです。何かが潜んでいるのでしょうか。あるいは、あの男が塀を乗り越えてきて、勝手口のすぐ外に潜み、私がうっかりドアを開けて出てくるのをじっと待っているのでしょうか。


私は不安になり、姉に電話をしました。姉夫婦が来てくれました。私は玄関からそっと出て、この夜は姉の家に泊めてもらうことになりました。勝手口のほうは危険だから、覗いたりせずにそのままにしておきました。


翌日、この話を聞くと、兄はこう言いました。

「実は、自分が車でうちを出ようとしたとき、自転車の若い男が、家の中を覗きこんでいる様子だった。車を降りてひっとらえようとすると、慌てて自転車の向きを変えて逃げていった」

そして兄は、中川警察へ電話を掛け、滝本刑事にこの話をしました。私は、刑事と口を利くのも金輪際御免の気分だったのですが、兄が強いるので滝本さんと話をすることになりました。


彼は、のんきな明るい声で、「大丈夫、大丈夫、何かの勘違い勘違い」と、不安になっている私をなだめようとしました。ところが私が、「勝手口のすぐの塀の外には、隣家の建築中の資材が積み上げてある。ちょうど塀を乗り越えるのに都合が良い具合に。私が聞いた物音は、人間がその資材を踏み越える音だった」というと、彼は、何を思いあたったのか、電話の向こうではっと顔色を変える様子です。

そして、まるで冷や汗を流さんばかりに、慌ててこう言いました、「じゃあ、明日、そちらのほうに調べに伺うから、待っててくれますね」


次の日あらわれたのは、滝本さんではなく、あのX刑事と、別の若い刑事の二人連れでした。X刑事は、この以前、血相を変えてうちに飛び込んできて盗聴がばれてしまったのがさすがに恥ずかしかったらしく、取り入るような照れ笑いを浮かべて挨拶しました。

彼はさっそく勝手口のところを、調べていきました。そして、顔色を変えました・・・。

警備を抜かれた可能性もあるのだな、と私は思いました。


X刑事があらわれたのをいい機会に、私は彼にいろいろ質問をしてみました。この人は、口から先に生まれた男というのか、どんな都合の悪い質問にも騙ったりすりかえたりしながら、立て板に水と返答しました。

だがむしろその能弁が自ら墓穴を掘ることにもなるのです。

「2月16日の夜、警官の到着が遅れた理由は?」と、私が尋ねると、彼は間髪をおかず、「最初に来たのは伏屋派出所の警官で、二度目に来たのが下之一色派出所員だ」といいました。そして「遠くから来ているんだから、遅れるのは仕方がない」と、なぜ今ごろそんなことを聞く、といわんばかりに口を尖らせました。


やはりこの男だ、と私は思いました。

この男こそ、その日、捜査の指揮を取り、警官を故意に遅らせた張本人に違いないのです。そうでなかったら、なぜ彼が、あの夜の警官の遅れの理由を知っていて、即座に返答できたりするのでしょう。彼こそが、そのような取り繕いを言いに行くように部下に指示を出したからこそ、すらすらと、あの夜警官を装った刑事が述べた言い訳と寸分違わぬせりふを繰り返すことができるのです。


X刑事は最後に、「あんた、怪しい物音を聞いたというのなら、5分も10分も家の中でぶるぶる震えてなんかいないで、すぐに110番すれば良かったじゃない」と蔑むように言うと、帰ってゆきました。


女をもうひとり殺させてから別件逮捕に踏み込もうとする、いわば【殺させ捜査】をおこなう警察に頼れとは!自己矛盾もはなはだしい。私は開いた口がふさがりませんでした。


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