告発原文06 二度目に来たのは刑事だった
翌2月24日。私は朝早く、近所の姉の家へ相談に出かけました。電話は盗聴されているので使えないからです。姉の家へ行くと、庭に義兄の車がまだありました。勤めを持つ義兄には迷惑掛けまいと、私はいったん少し戻って、(雨の日だったので)近くの駅に雨宿りしようと近鉄戸田駅まで来ました。
駅舎の壁にもたれて、屈強な若い男が何をするでもなく、通りを眺めていました。通勤時間帯というのに、厚手のセーターにこじきハットというラフな出で立ち、一見して張り込み中の刑事だと直感できました。
こんなところにも刑事が張り込んでいる。身の引き締まる思いがしました。
私は少し離れた場所から、その男をそれとなく眺めて観察していました。彼は、やがて私の視線に気がついて、こちらに目をやりました。そして、ちろちろと私のほうを見つづけるのです。まるで私の顔を見知っているように・・・。
私はそのとき、あっと声をあげそうになりました。私のほうも、彼の顔を知っている!
この男は、なんとあの2月16日の110番騒ぎの晩、二度目の通報のとき、「私は下之一色派出所の警官である」と名乗って、制服姿であらわれた人物だったのです。
あの警官は実は、妊婦殺人事件担当の刑事のひとりだった・・・。
否、違う、彼は、本当に派出所警官で、この日戸田駅に私服姿でぼんやり立っていたのは、非番の日でどこかに遊びに出かけるところだったのだ、と考えることもできるでしょう。
だが、この男が刑事であるという私の直感は、のちのち証明されます。私は、彼が私服姿で私の家近辺を張り込みしているのを、このあと6ー7回にわたって目撃することになるのです。
2度目の110番通報できた警官が実は刑事であったとわかったこのとき、私は、あの晩の警察の不審な動きのすべてが呑み込めると思いました。警官の到着がなぜあんなにも遅れたのか。遅れたのではない。捜査当局が故意に遅らせたのです。そのことがわかってきたのです。
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