第28話リアと新たな共鳴者
闇の魔女が復活して世界を魔女の瘴気を包む中、リアは、魔女が復活した東の大陸で大量発生した魔物からエルフの里を守る為に戦っていた。
共鳴してた頃の威力は無いもののクルスが教えてくれた魔法を操りながら同時にクルスの存在を感じ取ろうと試みていた。
闇の魔女の復活が現実となり、国がが瘴気に覆われていく中、彼女は孤独に戦い続け、かつて共鳴したクルスとのつながりを再び求めて、心の中で必死に呼びかけていた。
「クルス……今、どこにいるの?またあなたの声を聞きたい……あなたの力を感じたい」
その瞬間、彼女の心に確かな反応が伝わってきた。ふっと胸が温かくなり、懐かしい共鳴の感覚が蘇る。彼が近くにいるような感覚に、リアは思わず目を閉じ、心の中で彼の名を繰り返し呼びかけた。
「クルス……!」
けれども、その共鳴の先から聞こえてきた声は、彼女が期待していたものとは違っていた。
「……誰だ……?」
——その声はクルスではない——
「私はリア。エルフの剣士……東の大陸にいる、魔女の軍勢と戦っている者よ」
アキラはリアの声が聞こえてもすぐには受け入れることができなかった。異世界などという信じ難い話に巻き込まれている現実が、彼の心を不安と戸惑いでいっぱいにしていたのだ。
「本当に、君はエルフなのか?この……異世界にいるっていうのも、本当なのか?」
リアは静かに答えた。「信じがたいことかもしれないけれど、私にはクルスという共鳴者がいた。彼も別の世界から私の戦いを助けてくれていたわ」
アキラと同じようにリアもアキラという新たな共鳴者の存在に戸惑いを覚えていた。彼の声が心に響いても、簡単に受け入れることはできなかった。彼女の中には、クルスへの想いと、再びつながることへの強い願いが深く根付いていたからだ。
「アキラ……どうしてあなたが私と共鳴しているの?」リアは心の中で問いかけたが、その答えが見つかることはなかった。
リアは、自分が今感じている共鳴の力を疑いの目で見つめていた。共鳴とは、魂が響き合い、相手の心を引き出すもの。クルスと共鳴していたとき、彼とのつながりから湧き出る力が、自分を強く、そして温かく包んでくれた。それが今、別の存在と共鳴しているという現実に、どうしても納得がいかない。
「クルス……私に答えて……あなたの力が、今必要なの」
アキラの困惑も続く「君はどうやら嘘は言ってないらしい。だけど正直、どうして僕がこんな風に異世界とつながってるのかもわからないんだ。ただ……君の声が聞こえるたびに、確かにこの不思議な力を感じる。でも、ただの高校生の僕が、何を君にしてやれるっていうんだ?」
リアは「この人も好きでこんな世界と繋がったわけではないんだ。今は私の感情よりも世界を救う事が先。共鳴者の力は私が1番知っている。」と考えた。少し沈黙した後、穏やかに言葉を続けた。
「アキラ、私も最初はクルスがただの人間だと思っていた。だけど、彼は私に力をくれた。共鳴することで、私の力を引き出してくれたの。君も……そうなるかもしれない。だが、無理にとは言わない」
アキラはリアの言葉を聞きながら、心の中で葛藤が渦巻いた。信じたい気持ちと、現実感が乏しいことへの不安が交差する。だが、リアの声に含まれた切実な想いが、彼の心の奥底を揺さぶっていた。
「……この闇の中で、私はずっと戦っている。このエルフの里を守るため、そして……いつか、クルスと再び共鳴できる日を信じて」
リアの声に混ざる疲労と孤独が、アキラの心に深く響いた。彼女が感じている孤独、誰かに頼りたいのに、それを言えない強さ。アキラはふと、自分が助けを求めることができない彼女の姿に、自分の気持ちを重ねているのに気づいた。
「……君がそんなに強く、一人で戦っているのはすごいよ。でも……それで本当にいいのか?」
リアは戸惑いながらも返答した。「……分からない。ただ、今の私にはこれしかないから」
その言葉を聞いたアキラは、初めて彼女の存在が自分にとって現実のものに思えた。彼女の言葉にある弱さや迷いが、リアがただの幻想ではなく、現実の存在であることを確信させてくれたのだ。
そして次第に、アキラの中にある感情が変わり始めた。「僕がもし……君の力になることで、君が少しでも楽になるなら……僕が君の力になろう」
リアは静かに、だが確かに決意を固め始めていた。クルスへの想いが消えるわけではなかったが、彼の不在の中で戦い続けるためには、目の前にいるアキラの力を信じることもまた必要なのだと感じ始めていた。
心の中で複雑な感情が渦巻く中、リアはついに小さく頷いた。そしてアキラに向かって、ゆっくりと語りかけた。
「アキラ、あなたの力を……今だけ、貸してくれないかしら?」
リアのその言葉は、彼女の中でアキラという存在を受け入れる覚悟の第一歩だった。彼女は、今必要な力を持つ新たな共鳴者と共に、厳しい戦いの中に踏み出すことを決めた。
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