第29話共鳴者としての力
アキラは共鳴者としてリアをサポートする決意を固めたものの、何をどうすればいいのか全く分からなかった。そのため、リアに思い切って尋ねてみた。
「リア、僕にできることって、具体的には何なんだろう?」
リアは少し困ったように微笑みながら答えた。「正直、私も全てが分かっているわけじゃないの。
だけど、以前の共鳴者であるクルスには、スマホという機器に特別なアプリが現れて、それを使って私をサポートしてくれていたわ」
その言葉を聞いて、アキラは自分のスマホを見つめてみる。すると、そこには見慣れないアプリが3つ、突然インストールされていた。
アキラはスマホの画面を見つめ、何度か瞬きをした。
「アイテム生成『クリエイトキャプチャ』、ファイル共有『シェアリンク』、戦場スキャン『バトルビュー』……?」
インストールされているアプリの名前を繰り返してみる。
「これは、どういうことなんだ……?」と独りごちたその時、リアの落ち着いた声が彼の耳に届いた。
「それらのアプリがあれば、あなたも異世界から私をサポートしてくれる。前の共鳴者だったクルスも、同じようにこのアプリを使って助けてくれていたわ」
リアの言葉を聞きながら、アキラは未知の世界に足を踏み入れたような緊張感を覚えた。
確かに、このアプリの存在自体がすでに常識を超えているが、目の前にいるリアがどうにかして信じさせてくれているような不思議な感覚があった。
「そうか……じゃあ、まずは試してみるか」アキラはそう言って、手始めにアイテム生成『クリエイトキャプチャ』をタップしてみた。すると画面に「作りたいアイテムを選んでください」というメッセージが表示される。
リストをスクロールしていると、「回復ポーション」が目に留まり、そこに指を合わせてみた。すると、画面が切り替わり、必要な素材が表示された。「ガラス瓶」「ハーブ」「水」……それぞれが、現実世界で手に入るものばかりだ。
「なるほど、現実で必要なものを集めて、写真を撮って生成するのか。これならなんとかできそうだ」
アキラはそうつぶやくと、まず家のキッチンから小さなガラス瓶を探し出した。
さらに、庭に行って手に入れたハーブと水を加え、素材が揃ったことを確認する。次々とスマホのカメラで素材の写真を撮っていくと、「アイテム生成可能」という表示が画面に出た。
アキラは生成ボタンを押し、しばらく待つと画面に完成した回復ポーションが映し出された。その瞬間、どこか現実と非現実の境目が曖昧になるような感覚に襲われた。
「これを、リアに送るんだよな」
アキラは今度はファイル共有『シェアリンク』を起動し、生成したポーションを選択して転送ボタンを押した。
画面が一瞬光を放ったかと思うと、遠く離れた異世界にいるリアの手元に、透明な小瓶が現れた。
リアはその小瓶を手に取り、驚きの表情を浮かべながらも、優しく微笑んだ。「ありがとう、アキラ。本当に届くなんて……これがらあなたの魔法なのね」
「いや、僕こそすごいなって思ってる。……本当に異世界とつながってるんだな」アキラは自分の手で異世界に物を転送できたことに、どこか現実感を感じられずにいたが、同時にリアの反応がその事実を確かにしてくれた。
次に試すのは戦場スキャン『バトルビュー』だ。アキラはアプリをタップし、瞬時にリアのいる場所周辺の地形と敵の位置が画面に映し出されるのを確認した。その精密な表示に、アキラは少し興奮気味にリアに伝える。
「リア、今君がいる周りの様子がスマホに映ってるよ。これなら、もし敵が近づいてもすぐに分かるし、攻める場所も指示できるかもしれない」
リアは彼の言葉を聞きながら、目を細めてうなずいた。「それなら、これからの戦いも少し楽になるわね」
アキラは慎重にリアの位置を確認しながら、画面に映る地図上の敵を注視していた。
「まずは君の右側にある小さな丘の上に移動してみてくれ。そこなら、敵からも見つかりにくいし、周りを見渡せる」
リアはすぐにアキラの指示に従い、丘の上に向かって軽やかに駆け上がった。そして辺りを見渡すと、彼が言った通り、魔物たちの姿が少し遠くに見える。
「アキラ、見えるわ。敵の位置も、私の方から確認できる」
アキラは次に、ファイル共有『シェアリンク』を使ってもう一本の回復ポーションを送り、リアに再び戦いに備えた準備を整えるよう促した。
「信じられないけど、家にいながらやれることはあるんだな」と、アキラはスマホを見つめながらつぶやいた。
リアはポーションを手にしながら、静かに応えた。「アキラ、ありがとう。これを使って戦うわ。」
その言葉に、アキラも胸が温かくなるのを感じた。彼は自分がリアの力になっていることに誇りを感じた。
「じゃあ、リア僕たちの初戦といこうか!」
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