異世界エルフとスマホで繋がった僕〜世界を救う手助けは検索から〜

@Ta-1

第1話エピローグ:ルーセリアの森にて

巨大な熊のような魔物の低いうなり声が森の中に響き、リアは息を切らしながら、茂みをかき分けて進んでいた。彼女の額には汗がにじみ、手には愛用の剣が握られている。森の木々が暗い影を落とし、魔物の鋭い目がまるでリアのすべてを見透かすように光っている。


「どうして……ここまで執拗に追ってくるの?」


リアは自らに問いかけるが、答えは出ない。彼女は一族に伝わる「古の書」を探していた。そこに記されているのは、この世界で最も古い秘密――闇の魔女の「禁じられた力」の真実だった。


リアはリアンナ・サリアスフィンというエルフの剣士だった。古の書を守り通す役目を果たしてきたが、最近その「古の書」が何者かに盗まれた。盗まれた事によってここ最近、強力な魔物の数が増えてきていたのだった。


「……まずい。このままではあの力が、さらに強力な魔物を呼び寄せるかもしれない」


息を整える間もなく、リアの背後で何かが動く音がした。振り返ると、熊のような巨大な魔物が低い唸り声を上げ、こちらに向かって足音を重く刻んでいる。鋭い爪が光り、巨体が森の小枝を次々と砕いて迫ってくるのが見える。リアはその姿に怯みそうになるも、剣を構え直し、反撃のチャンスをうかがった。


だが、すぐに彼女は理解した。今の自分では、この魔物を倒すのは難しい。頼れる仲間もいない孤独な状況に、彼女は自分の無力さを感じた。


「……誰か、助けて……!」


リアの口から、思わずその言葉が零れる。剣士として誇り高い彼女が、他人に助けを求めるなど考えもしなかったが、この絶体絶命の状況でついに限界に達していた。すると、彼女の体内で眠っていた「遠くの者と交信するスキル」が発動し、彼女の助けを求める声が、異世界のどこか遠くへと飛んでいった。


「頼む……誰でもいい……私に、力を貸してくれ……」


その瞬間、リアの意識はどこか別の世界と繋がる感覚があった。


「……誰か私を助けて」


そして、リアの意識は再び現実に戻り、背後から熊の魔物の気配が近づいていた――

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