第16話「信頼の芽生え」

第三の試練を終え、夜会も解散した翌朝。亮は宮殿の一角に設けられた一室で目を覚ました。昨夜の疲れがまだ体に残っているが、不思議と気分は悪くない。


窓の外から差し込む光が部屋を満たし、亮は深呼吸をする。昨日の出来事が胸に蘇る。悔しい思いもしたが、アリアとの距離が縮まったことを感じる。そして、彼女の破滅フラグを覆すため、さらに力を尽くす決意を新たにした。


朝の評価


朝食を終えた後、亮はアリアと共に宮殿の広間へ向かった。ここでは、夜会に参加した貴族たちや従者たちが互いに挨拶を交わしている。


その中で、亮の姿を見た侍女たちや従者たちが小声で話し始めるのが耳に入った。


「あの方、昨日の夜会で本当に頑張っていたわね」

「ええ、アリアお嬢様のために動き回っていた姿、印象的だったわ」


亮はその声を聞き、少し恥ずかしくなりながら周囲を見渡す。確かに昨日は慣れない環境で必死に振る舞ったが、それがどれほど評価されているのかまでは考えていなかった。


「亮君、昨日のあなたの頑張り、みんな見ていたのよ」


隣に立つアリアの言葉に、亮は驚いた表情で答える。


「いや、俺はただ必死だっただけで…。評価されるようなことをしたつもりはないんだけど」


「それでも、周りの人はちゃんと見ているものよ」


アリアが柔らかく微笑むと、数人の侍女が亮に歩み寄ってきた。


感謝の言葉


侍女の一人が、一歩前に出て恥ずかしそうに話し始めた。


「亮様、昨日の夜会でのご活躍、とても印象的でした。アリアお嬢様を支える姿が本当に素敵でした」


その言葉に亮は一瞬驚き、視線を彷徨わせる。


「いや、俺は特別なことをしたわけじゃ…」


「いえ、亮様が率先して動き、お嬢様を支えたことで、私たち従者も勇気をもらいました」


別の侍女が微笑みながら続ける。その様子に、亮は少しだけ背筋を伸ばした。


アリアもその様子を見守りながら、小さく息を吐いて呟くように言う。


「ね?あなたの行動は、ちゃんと周りの人たちに伝わっているのよ」


信頼の証


その後も亮に声をかける人は後を絶たなかった。貴族の従者や護衛、さらにはアリアに仕える者たちからも、彼の行動を称賛する声が上がる。


「亮様、昨日のご様子を見て思いました。お嬢様のために尽くされるその姿勢は、私たちが見習うべきものです」


「亮様がいてくださるおかげで、お嬢様はとても安心されているように見えました」


亮は次々と向けられる言葉に戸惑いながらも、感謝を伝える。


「ありがとうございます。でも、本当に俺一人の力じゃ何もできませんでした。皆さんのおかげです」


謙虚な返答に、周囲の人々も好意的に頷く。その場の雰囲気に後押しされ、亮は少しだけ自信を取り戻す。


アリアとの会話


広間を後にし、廊下を歩いていると、アリアがふと足を止めた。振り返ると、彼女が静かに亮を見つめていた。


「亮君、あなたがここまで頑張ってくれるのは嬉しいけれど…本当に無理はしないでね」


その言葉に、亮は苦笑しながら答えた。


「無理なんてしてないさ。ただ、俺には君を守る理由がある。それが俺の役割だと思ってる」


「守る…理由?」


アリアが問い返すと、亮は少し間を置いてから続けた。


「君がこれまでどれだけ孤独だったか、少しだけわかる気がするんだ。だから、君が笑っていられるようにしたい。それだけさ」


その言葉に、アリアの頬がほんのりと赤く染まった。


「亮君って、本当に変わった人ね」


そう言いながらも、アリアはどこか安心したように微笑む。その笑顔を見て、亮は再び彼女のために頑張ろうと決意するのだった。

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