第2話 吸血鬼

 木の影からそっと見てみる。


「スラー」


 なんか特徴的な鳴き声のドロッとした物体……


「スライムじゃない?」


 そうチハルが言ってきた。たぶんそうだ。典型的なスライムの形している。


「なんかあいつ、可愛いな」


 スライムの顔が可愛かったので私は呟く。

 

「ん?私以外のやつに可愛いって言った?」


 チハルが少し怒った表情で剣を向けてきたので謝る。


「え?その刃物なんか変じゃない?」


 チハルが持っている刃物……剣がなんか赤いのだ。血がついているというか……全体が血みたいな色している。


「ていうか、どこで拾ってきたの?」


 よく考えたらいつの間に、こんな剣を拾ってきたのだろうか。


「なんか手に力込めたら、持ってた」


 チハルが怖いこと言い出した。本当にそうなのか確認するためにもう一回やってと頼む。


「いいよ」


 あ、事実だ。チハルの握りこぶしの中から、血の剣が出てきた。


「せっかくだしこいつに名前、付けるわ」


 チハルは血の剣に名前を付けようと悩んでいる。


「よし、決めたわ……出てこい!血剣ブラッドソード!」


 血の剣だから血剣か……


「そのまんまじゃねぇか!」


 思わず私はツッコミを入れる。でも結局名前は血剣にした。


「ちょっとあいつで試し斬りしてくるわ」


 そう言って、チハルはさっきのスライムの真ん中に血剣を突き刺す。血剣にスライムの死体がへばりついてる。


「ねえ、見て!ユウナ、あんたが可愛いって言った子、動かなくなったよ」 


 純粋そうな笑顔で、えげつない発言をしてくる。私はスライムの死体から目をそらす。


「ほら、よく見て!ポタポタ垂れてるスライムの液体が血みたいで綺麗でしょ」


 確かに、血みたいに垂れている。だから……それ以上、見せないで。


「血……血がほしい。ねえ、ユウナ、血飲ませて」

 

 いきなりチハルが首筋に噛みついてくる。とうとうチハルも完全に気が狂ったのか。


「……ありがと!ユウナの血って美味しいね!」


 吸血鬼!?そういえば異世界に来てからチハルがマント着てるし、八重歯が2本生えてる。もしかして吸血鬼になったの?


「なんか私、異世界来てから吸血鬼になったみたい。転生する時、神様を名乗るおっさんの前で、ユウナの血が飲みたいって言ったからかな?」


 ん?何かとんでもない発言が聞こえた気がするけどスルーするか。


「じゃあ行こっか!」


 チハルが血剣にスライムを刺したまま歩く。歩いていると大きな川があった。綺麗な色をしている。チハルがその川にスライムをポイ捨てした。


「あ!あっちに橋あるよ!」


 

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