(5番目)

一方の翔子も携帯端末の画面を見つめながらも浮かない表情になってしまう。会う約束を一方的に切られたからではない。察してしまったからだ。メッセージの文面から春矢が再び追い詰められている事を…。

「…さて。どうしようかな。一応、愛にも知らせるべき、よね?注意喚起の為にも。」

自分の想いをあまり口にしないが、翔子は幼馴染みで特別に彼女の事が大好きだからか。声に出さなくても愛の考えている事やその想いについて他の皆よりも気付いていた。愛が春矢達と会って歌ったりしているのを楽しんでいる事をだ。だが、今回の事を伝えた時にどういう反応をするかは分からなかったからか。春矢から来たメッセージを、ほぼ修正しない形のまま愛へと送った。何らかの反応が来るのかも分からない。そもそもメッセージを見てくれるかも分からない。そんな不安のようなものも僅かに覚えながら…。


 だからこそ翔子は驚いたのだ。メッセージを送って1時間が経過したぐらいに既読が付いた。そればかりか電話までかかってきた上に、脅迫文を送った人物と対峙したいとも告げてきたのだから…。

「何か…意外、だね。愛がそこまでしようって考える、なんて。」

「ええ、意外でしょう?自分でも思い付いた事に驚いている。けど…なんだろう。何か向かっていきたくなったのよね。彼が大変な状態のままだって知ったら。多分、守りたいんだと思う。歌う事が好きだって改めて気付かせてくれた。そのきっかけとかを作ってくれた彼を。この日々をね。」

「愛…。」

「あと…単純に私達にまで危害を加えようとしている事が書かれていたんでしょう?今は脅迫だけだとしても止めたいじゃない。気持ち良く歌い続ける為にも。だから…動こうと思ったの。…あなたはどう思う?」

「あ、うん…。そう、だね…。良いんじゃないかな。」

「…翔子?」

行動を起こそうとする理由を告げた愛だったが、翔子が戸惑っているのが声だけでも気付いたからだろう。直前まで自分が口にした事が原因であると何となく察しながらも愛は尋ねる。すると我に返った翔子は続けた。

「…ごめん。まさか愛がそこまで彼の事も大切にしているって知って驚いちゃったんだ。あ、もちろん良い意味でね。」

「翔子…。」

「それで…どうしようか?『行動を起こす。』って言っても相手が誰か、そもそも男の人か女の人かも分からないし。」

「そうね…。」

その言葉に改めて頷く愛。翔子の言う通り脅迫文を送ってきた相手が分からなかったからだ。それでも脅迫者と対峙したいという想いは持ち続けていて。その正体を突き止める為の方法も含めて思考を巡らせるのだった。

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