性と死の狭間で生きる~元家出少女Sの告白~

元家出少女S

1 プロローグ

 14才、中学2年の夏の初め、私は家出して、風俗で働いていた。


 それが今では、お年寄りや子連れのお母さん達にヨガを教えながら、旦那と仲良く2人の子供を育てている。


 当時はやりたい事も大切な人も何もなく空っぽで、自殺未遂を繰り返していた。


 死ぬしかない。

こんな私に明るい未来なんてないと思っていた。


 あれから24年、現実の未来は…。

 やっぱり大変で困難だらけだ。


 でも何気ない日常が本当に楽しくて、ふとした瞬間に震えるほどの幸せを噛み締めている。


 人は変わる。

 自分自身はもちろん。周りも変わる。


 大嫌いだった自分が好きになり、苦手を通り越し、恨みすら感じていた人が好ましく思え、助け合えたりもする。


『死』以外、何の希望も見出だせなかった少女が、

「大丈夫。あなたはちゃんと幸せになれるよ」

 と後ろからあの日の少女を抱きしめてあげたいと思う大人になった。


 あの日、死ななくて良かった。


 1度しかない人生、辛い、悲しい、苦しいだけで終わらせなくて本当に良かった。


 今では日々に喜びが溢れ、明日の予定が、1年後の仕事の展望が、10年後の家族の未来が、楽しみでワクワクする!


 そう思えるようになれたのは、実はあの日、本当は死んだからだ。

 正確には殺したのだ。

 全部じゃない。半分。


 私はあの日、死のうと思い、中学校の屋上に上がり、広く美し過ぎる空の下、私の半分を突き落とした。


 そして、残りの半分で自由と言う名の別の地獄へ走りだした。

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