第29話ナース、高橋真理亜(タカハシマリア)

 頭に包帯を巻かれていたが、別にどこも痛まなかった。


「たかはっさーん点滴終わりますよー?」全開している片引き戸の通路に向かって若い看護婦が良く通る声で先輩を呼んでいた。


職員の看護婦を呼んで、点滴が終わるようだ・・・。

 うとうとしながらコツコツと、靴音をさせながら近付いて来る職員を待った。


「抗生剤を代えますね、アラ!?」空気の動きで独り入って来たのを感じる。


看護師が動きを停めて篠山を観ていた。


 篠山も頭の方に有る点滴を交換する看護婦の「たかはっさん」とやらを観ようと頭をずらして、看護婦を観た!


「直美!」自然と口に出た篠山は、ガバッと起き上がり、ベッド周りに居たスタッフを驚かせた。


「直美!・・・、では無いのですか?」お目当ての女性では無く落胆したように肩を落とす篠山に看護婦は、高橋真理亜(たかはしまりあ)と名乗った。

 只、ここでは何だからと、屋外へリハビリがてら散歩でもしよう。と、篠山は、真理亜と二人屋外へ歩いた。

 篠山と看護師の真理亜は、眼を見合わせ真剣な面持ちで会話を持ちながら坂の下へ向かい歩いていた。


「許嫁の高橋直美は、実在していますよ?」


「えー、本当ですかと、篠山の顔にパッと灯りが差した。

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