第25話 魔力
「少しずつ魔力をイチノスケさんに向けるから、気をしっかり持ってね」
高まって行く魔力を徐々に感じれるようになっているのだろう。額から汗がふつふつと現れてきている。
「はい、ここまで」
魔力を遮断すると、イチノスケさんの顔から大量の汗が流れ、下にポタポタと落ちていた。
「……こ、これが、魔力ですか……」
「ぼくの師匠が教えてくれた魔力感知法だね。訓練すれば自分の魔力の量や強さもわかってくるそうだよ」
オレは訓練しなくても自分のステータスはわかっていたから真偽はわからん。でも、他はわかっていたから正しい訓練法なんだと思うよ。やっておいてなんだけどさ。
「立てるなら顔を洗ってくるといいですよ」
「は、はい。そうさせてもらいます」
よろよろと立ち上がり、部屋を出て行った。
「もう一人できるからやってみたい人、いる?」
「わ、わたしをお願いします!」
革鎧を纏った男の人が出て来た。
「お名前は?」
「カンザブローです。イチノスケの従兄弟になります。隊の警備を任されております」
従兄弟さんな。なんとなく、似てもなくないか? 魔力は3か。もうちょっと強くしないとダメかもな。
「じゃあ、そこに座って」
砂の上に座ってもらう。マットレスを洗うのも大変だろうしね。
「しっかり意識を保ってね。気を緩めると魔力に圧されるから」
「はい。わかりました」
カンザブローさんの前に立ち、イチノスケさんより強く魔力をぶつける。
「わかる?」
「……は、はい。これまで感じたこともない圧に意識を持って行かれそうです」
「それに負けないでくださいね。カンザブローさんの中にある魔力がぼくの魔力に共鳴しているところですから」
小さい故にその共鳴は凄まじいものだろう。でも、師匠の話では目覚めさせるのにいいんだそうだ。
「はい、終わり。カンザブローさんも顔を洗ってくるといいよ。ぼくも疲れた」
ふー。回復薬二十粒くらい創った魔力を消費しちゃったよ。
「大丈夫?」
ルーがぼくの額の汗を拭いてくれた。
「水ちょうだい」
はいと大容量水筒をもらってゴクゴク飲み出した。フー。美味い。
「お前はなにしに来たんだ?」
「なにしにだろうね? でもまあ、田中一族が魔力を増やしてくれたらぼくも助かるからね。無駄ではないよ」
魔力は何歳になっても訓練すれば増えて行く。個々に限界はあるだろうが、それでも鍛えて行けば50までは上昇するはず。その二割でも三割でも売ってくれたらオレの負担も減るってものだ。先行投資と思えば安いものだ。
「すみません。なにか精がつくものを作ってもらいます? 二人が落ち着いたらお腹が減ると思うので」
睡眠で魔力は回復するもののエネルギーを摂取しないと魔力を生み出すことはできないんだよ。
「すぐに用意しろ! エクラカ様。お疲れならお部屋を用意致しますが?」
「そうだね。少し休ませてもらおうかな。ラウルさん。あとはよろしくお願いしますね」
このチャンスを活かして田中一族と繋がりを持ってこいと目で伝えた。
「わかった。ゆっくり休ませてもらえ。お手数をおかけする。ルージュリン、頼むぞ」
なにを言っているかわからないだろうが、雰囲気を読んたルーが頷いた。
ルーに抱えてもらって部屋に案内してもらう。
人間が来ることもあるのか、人間用の部屋に通され、人間用のベッドに寝かされた。
「必要なものがございましたら遠慮なく申し出てくださいませ」
メイドみたいな人なのか、一礼して部屋を出て行った。
「おもしろいもんだね」
なかなかいいベッドである。あのマットレスといい、このベッドといい、なかなかいいものを作るじゃないか。是非、屋敷に導入させてもらうじゃないか。
「エクラカ、着替え休む?」
「そこまで疲れてないから大丈夫だよ。たぶん、そう長い時間休めないと思うから」
その勘は正しく、一時間くらいでイチノスケさんがやって来た。
「エクラカ殿。調子はどうだろうか?」
「まあまあよくなりました。イチノスケさんも魔力を消費すると回復しようと眠くなるので気をつけてください。ただ、魔力を増やしたいというなら限界まで使って限界を伸ばして行くといいですよ。まあ、無理するのはよくないですけどね」
親指と人差し指で輪を作ってイチノスケさんをサーチする。
「うん。魔力が10まで増えている。共鳴訓練はケンタウロスにも有効みたいだね」
多いほうが少ないほうの魔力を高める。ほんまかいな、と思ってたけど、ほんまだったよ。もしかして、駆除員を転生させるとかヤバくね? この世界の理がいろいろ変わっちゃうよね?
「どんな魔法が使えるのでしょうか?」
「それは、田中さんがどの属性に長けていたかによるね。血筋が重要みたいだから」
他の属性持ちと血が混じるなら変わることもあるだろうが、すべては田中さんの血から始まっている。属性は変わらないのではないだろうな?
「わからないのでしょうか?」
「それが見えないんだよね。たぶん、女神の力だから強すぎてわからないんだと思う」
それでも属性くらいならわかると思うんだがな~。ネットスーパー系が関係しているんだろうか?
「でもまあ、神の御子は結構いるみたいだし、魔力を増やすことは無駄だとは思わないよ。ぼくも魔力を利用した能力だからね。魔力が200もあればインスタントカメラを創ることはできるからね」
ちなみにオレの魔力は200から300って感じかな? 振れ幅があるのは体調の良し悪しだね。ただ、体が成長したのなら500くらいにはなるんじゃないか? そんな気がするのだ。
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