サッカー部の将軍

香豊大

プロローグ

雲一つない蒼穹に、鳴り響くホイッスル。

2時間弱にもわたる激戦の終了を告げるその音は、勝者と敗者を決定づけるもので。

舞台となった競技場には、勝者の雄叫びがこだましていた。


勝負の世界、特に一度の負けも許されないトーナメントという形式は残酷で、基本的に敗者が注目されることは無い。

ただ、物事には例外というものが存在する。

事実、この試合の敗者、麗晶れいしょう高校の生徒たちは皆、満足気な顔をしていた。


高校サッカー選手権大会、地区予選決勝。

これまで凡庸な成績しか残せていないこの高校にとって、史上初の決勝進出、それも県内屈指の名門を相手に先制。結果も1-3でおさめたというのは、大きな収穫と言えるだろう。

決勝という大舞台で悔しがれるというのは、これまでに多くの強敵を打ち倒してきた勝者の特権なのだ。

敗者と勝者、双方の関係者が9割を占めるスタンドから、割れんばかりの拍手がもたらされた。

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