第7話 貴方の生涯は神のみぞ知る


「...」。


「...」。


室内の間にしばらく沈黙が流れ、外の風景を眺めていたカバリツ副司令官はミュージーの方に向き直って話を切り出した。


「君は確か、部隊に勤務しながら王立国防大学に在籍していて日々勉学に励んでいるようだね? どうだね? 大学の方は? 」。


「はい、学問との両立はなかなか大変ですが、今のところは問題無く受講できております」。


ミュージーが即答すると、カバリツ副司令官は納得したような様子で何度か頷いた。


「ふむ、講師を担当している教官には私の同級生が多くてね、君の事も彼等から聞いているよ。普段は特殊治安部隊の小隊長として王城で勤務をしながらも、大学でも非常に優秀な成績を収めているとね。皆は口を揃えて非常に優秀で将来有望な未来の王国防長官だと、君の事を手放しで称賛していたよ」。


「そんな、おそれ多いですよ」。


ミュージーは困惑した様子を浮かべつつも、カバリツ副司令官に愛想笑いをしながらそう答えた。


「入隊早々、君には小隊長として小隊を構成させた。そして、現地の隊員達をコントロールしていく事も相当の重圧があったと思う。毎日、本当によくやっているよ」。


「ありがとうございます」。


ミュージーがそう言って一礼すると、カバリツ副司令官は小さく頷きながら再びソファーに腰を下ろした。


「それで、ちょっと話は変わるんだが...君はユズポン大聖堂内にある児童養護施設出身だったね? 」。


カバリツ副司令官は懐から小さな木箱を取り出し、その箱の中に入っている一本の葉巻を掴みながらそう問いかけた。


「はい、そうです」。


ミュージーがそう答えると、カバリツ副司令官は頷きながら葉巻の煙を吐き出した。


「ポンズ王国が戦中期だった頃、君は生まれて間もなくして両親を戦争で亡くした。父親は騎兵部隊の兵士、母親も戦地へ出征する衛生兵だったね」。


「はい」。


ミュージーは淡々とした口調でそう答えた。


「君は亡くなった両親が命を懸けてこの王国のために戦い続けた事に影響を受け、その意思を受け継ぐために王国を護るべく君もその道を歩み始めた。まぁ、天に召された御両親の心境は...複雑だろうけどね」。


カバリツ副司令官はそう言うと、ミュージーに微笑を浮かべた。


「ええ、見方によっては親不孝とも捉えられかねないですね」。


ミュージーは苦笑交じりにそう答えると、カバリツ副司令官の表情が綻びた。


「ははは! そうかもな! ...それでミュージー君、早速なんだが」。


笑みを浮かべていたカバリツ副司令官は神妙な表情へ即座に戻し、そう話を切り出した。


「騎士団への転勤...というのは考えていないかね? 」。


「騎士団...? 」。


ミュージーはカバリツ副司令官の言葉に怪訝な表情を浮かべた。



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