2XXX年のサイバーシティからファンタジー異世界に転移した少年
@TOYA_notte
プロローグ
――2XXX年
超未来のサイバーシティ。ネオンライトで光り輝く超高速タワーが無数に立ち並び、道は金属の鉄板で完全に舗装されている。
時刻は深夜にもかかわらず、街は昼間のように明るく照らされ、眠らぬ都市の様相を呈していた。
タワーの間を縫うように、空中に浮かぶ巨大な電子パネルが広告やニュースを映し出し、
さらに舗装された道路や建物の外壁さえも多彩な色で発光している。
人種も民族もさまざま。肌の色も、服装も、身体の一部さえも異なる彼らは、サイバーシティの一部として共存し、その混沌とした美しさを形作っている。
この街は、まるで生きているかのように絶え間なく変化し、未来のテクノロジーが日常の一部となった世界を映し出している。
だが……木々や土、草花といった自然の要素は一切存在しない。すべてが人工物で構成され、生命の温もりを感じさせるものはない。
・・・
とある路地裏の薄暗い一角に、ほとんど目立たない小さな修理工房がある。
店の外観は古びた鉄の扉に、かろうじて点灯するネオンの看板が一つ。
中に入ると、そこは機械部品やツールが無秩序に散らばり、ごちゃついた空間が広がっている。
空気はオイルの匂いと、どこか埃っぽさが混じり合った独特の香りに包まれていた。
その店内の片隅に、メカニックの少女、リア・ノックスがいた。
彼女はまだ若いが、メカニックとしての腕は確かだ。
肩までの赤茶色の髪を無造作に結い、油で汚れた黒いジャンプスーツを着ている。
その上から、手入れの行き届いていないレザーのベストを羽織り、ポケットには工具が無造作に差し込まれていた。
アイリスは古い作業台の前で、故障した機械化義肢を修理していた。
その手元に光るホログラムパネルを操作しながら、繊細な指で配線をいじっている姿は、どこか夢中になっているようにさえ見える。
その時、扉が開き、彼女の幼馴染であるノアディル・ヴェイガーが姿を現した。
ノアディルは鮮やかな赤い髪を束ね、黒のタイトなジャケットを羽織っていた。
ジャケットの内側にはAIを搭載した小型銃が隠されており、全身を覆う透明なシールドが微かに光を反射している。
右腕と右足は機械化しており、左眼には高性能な義眼が埋め込まれていた。その鋭い視線は、かつての無邪気な少年から成長した証だった。
ノアディルが工房に入ると、リア・ノックスが作業を一時中断し、彼に向かって言った。
「お帰り! 今日もホワイトホールの調査?」
ノアディルは頷きながら、自分の装備を確認する。彼の目は、リアの問いかけに応じるためにわずかに柔らかくなった。
「ああ、またホワイトホールの近くで目撃情報があったんだ。最近、異常な数のホワイトホールが出現しているって話だ。すぐに次の調査へ行くよ」
その言葉にリアは心配そうな表情をしていた。
ノアディルはすぐにそれに気が付き、
「心配いらないさ」
と微笑んだ。
ホワイトホールはこの未来都市の人々を困惑させている謎の現象だ。
白い穴が空中に突然現れ、強い風を吹き出す。それだけならまだしも、極稀に何かがその穴から飛び出してくることがあるのだ。
飛び出してくるものは、枯れ葉や木の枝、時には宝石のように美しい物が混ざっていることもあると言う。
この未来の世界では、自然がほとんど失われたため、たとえそれがただの枯れ葉であっても、超高額で取引されることがある。
ノアディルはその希少な品を手に入れるために、ホワイトホールの近くに赴くことを決意していた。
「それに、葉っぱ1枚でも高く売れる! それで工房の修理だってできるぞ」
リアは心配そうに首を振ったが、ノアディルの思いを理解し感謝をしていた。
「分かった……でも、ボクにとってノアディルが無事でいる事が一番大事だからね! 気を付けてね……」
ノアディルは再び微笑みながら、
「ありがとう。じゃぁ行ってくるよ」
と再び外へと出かけた。
リアは彼が無事に帰ってくることを祈りながら、作業に戻った。
工房には再び機械の音と工具の音が響いた。
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