地味なスキルで最強に!?陰のサポート役、実は隠れ英雄
arina
第1話「異世界転生!? サポートスキルしかない地味な冒険の始まり
夜の静寂を切り裂くように、突然の閃光が天宮レンの視界を真っ白に染めた。
「えっ、なんだこれ……」
頭の中で不思議な音が鳴り響き、視界がぼんやりと戻ってきたとき、レンは自分がまったく見知らぬ場所に立っていることに気づいた。そこはまるでファンタジー映画やゲームで見たことのあるような、石造りの大広間だった。重厚な柱が立ち並び、どこか荘厳な雰囲気が漂っている。
「あなたが……召喚された勇者なのですね」
そう言って話しかけてきたのは、王冠をかぶった初老の男性だった。彼の傍らには、美しい服装をまとった女性や騎士たちが並んでいる。どうやらこの場所は王城らしく、レンの前にいるのは国王その人らしい。
「は、はい……いや、違います! なんで俺がここにいるんですか!?」
戸惑うレンに対し、王は微笑みながら説明を始めた。
「あなたは異世界から召喚された『勇者』です。邪悪な魔物からこの国を救うために、どうか私たちをお助けください!」
異世界転生。まさかそんなありふれた話が自分の身に起こるとは夢にも思っていなかったレンは、呆然としたまま立ち尽くした。
「……え? 本当に異世界?」
何が何だかわからないまま、彼は再び王の言葉に引き戻された。
「あなたには特別なスキルが授けられています。それを使えば、きっと我が国を救う力となるでしょう」
その言葉に期待を抱きながら、レンは心の中で自分のステータスを確認するように祈りを込めた。すると、頭の中に何かが表示される感覚がし、彼の目の前にステータスウィンドウが現れた。
ステータス
名前:天宮レン
職業:サポーター
スキル:サポート強化(Lv1)
「サポート……強化?」
表示されたスキルの内容を見て、レンはがっかりしてしまった。攻撃魔法や剣術などの強力なスキルではなく、仲間を補助するだけの「サポート強化」という地味な能力だったのだ。
「勇者様、いかがでしたか? 何か強力なスキルをお持ちのようですね」
期待に満ちた目でレンを見つめる王に対し、レンは言葉を濁すしかなかった。
「いや……その、サポートする系のスキルみたいです……」
王は一瞬戸惑いの表情を浮かべたが、すぐに優しく笑みを浮かべてこう言った。
「いえ、サポートも立派な力です。共に戦う仲間を助ける力こそ、勇者としての重要な資質でしょう」
その言葉に少し励まされながらも、レンは不安を拭いきれなかった。自分がこの国を救うために召喚された「勇者」だという自覚はまだ湧いてこない。しかし、王から与えられた宿命に応えなければならない気もしていた。
数日後
ギルドでの登録を終え、レンは最初の依頼を受けることになった。王城での生活は確かに安定していたが、いつまでもただ召喚されただけの存在でいるわけにはいかない。実力を試すため、彼は冒険者としての第一歩を踏み出した。
依頼内容は、「近くの森で暴れるゴブリンの討伐」。初めての冒険にしては手軽な内容だったが、地味なサポートスキルしかない自分には十分すぎる挑戦だ。
森の中に足を踏み入れると、レンは早速ゴブリンと遭遇した。小柄で醜い顔をした魔物が、こちらに向かってギャーギャーと叫びながら突進してくる。レンは手にした小さな剣を構えたが、緊張で足が震え、体が動かない。
「うわっ……や、やばい!」
ゴブリンが目の前まで迫り、レンは恐怖で身を硬直させたその瞬間——
「おい、そこの地味な冒険者!下がってろ!」
突如、声が響き、レンの目の前に大柄な男性が立ちはだかった。金髪でがっしりした体格のその男は、見事な剣捌きでゴブリンを一瞬で倒した。
「……あ、ありがとう」
命拾いしたレンが礼を言うと、男はにやりと笑った。
「お前、ひょっとして新入りか? 俺はカイル。冒険者ギルドのベテランだ。こんな所で死にたくなかったら、もう少し鍛えてから来いよ」
彼の気さくな態度に、レンは思わず苦笑した。
「俺は天宮レン。……サポート系のスキルしかない、地味な冒険者だよ」
カイルはそれを聞いて驚いた顔をしたが、すぐに理解したように頷いた。
「ふむ、サポートか。だが、それが役に立たないとは限らないぜ。俺たち冒険者は、仲間と共に戦うことが大事なんだ」
その言葉に励まされたレンは、カイルに誘われて一緒に依頼を遂行することになった。
初めての協力戦
依頼の森に入ると、次々とゴブリンの群れが現れた。カイルが前線で戦う中、レンはサポートスキルを発動させ、彼の防御力や攻撃速度をわずかに上昇させた。
「おお、なんだ? 体が軽くなったぞ!」
カイルは驚きながらもすぐに戦闘に集中し、次々とゴブリンを倒していく。その光景にレンは内心感動し、自分のスキルが少しでも役立っていることに嬉しさを覚えた。
しかし、戦いが続くうちにレンの体力も徐々に限界を迎え、スキルの維持が難しくなってきた。
「くっ……こんなに体力を消耗するなんて……」
カイルもそれに気づき、戦闘を中断してレンに声をかけた。
「無理はするな、レン。お前がサポートしてくれたおかげで、俺も全力を出せているんだ」
その言葉を聞いた瞬間、レンは「自分がただの地味なサポート役」ではなく、仲間の力を引き出す大事な役割を果たしているのだと初めて実感した。
帰還と新たな決意
無事に依頼を達成し、ギルドに戻ると、レンとカイルは依頼の報酬を受け取った。ギルドの職員も彼らの活躍に目を見張り、レンに向かって微笑みかけた。
「天宮さん、あなたのサポートスキル、とても素晴らしかったです。これからも活躍を期待していますね」
その一言が、レンにとって大きな自信となった。地味なスキルであっても、誰かを支える力になれる。それは自分の存在意義であり、これからの冒険に対する誓いとなった。
「ありがとう。俺、もう少し頑張ってみようと思う」
レンは自分のスキルをさらに磨き、仲間を支える強力な「サポーター」として成長することを決意する。そして、王国に救いの手を差し伸べる英雄としての運命に向けて、静かに第一歩を踏み出したのだった。
次回予告
次回、第2話:「新たな仲間!魔法使いリリスとの出会い」
サポートの力に気づいたレンは、新たな仲間と出会い、さらなる冒険に踏み出す。異世界での成長と友情が、レンを「仲間たちの英雄」へと導く——
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