なんてこった! 月曜日が殺されちゃった!
ちびまるフォイ
月曜日のかわりはいるが、その曜日の代わりは無い
月曜日が殺された。
第一発見者は日曜日だった。
日曜「げ、月曜日!! し……死んでる!」
土曜「誰がこんなことを……」
火曜「この1週間シェアハウスには俺らしかいないじゃないか」
木曜「それじゃ……この中に月曜を殺した犯人がいるのか?」
金曜「おいおい冗談じゃ無いゼ。僕は部屋に戻らせてもらう」
水曜「バカ。そんなことしたら殺されるぞ!」
火曜「今、全員がこの場にいるなら犯人も手を出せない。
みんなで固まって犯人をさがそう」
全曜日がうなづいた。
3人集まれば文殊の知恵ともいう。
6つも曜日が集まったなら何ができるのだろうか。
きっと殺人犯を探し当てることもできるはず。
木曜「でも……こういうのって第一発見者が一番怪しくない?」
日曜「え!? 俺!?」
木曜「まっさきに月曜が死んだのを見つけたってことは
最初から死んだことを知っているって可能性もあるし」
日曜「ちがっ……! 俺はただ!
明日の部屋にいる月曜を起こしに行こうとしただけだ!」
金曜「めんどくさいしもう日曜が殺したってことでよくね?」
日曜「こんな真っ先に疑われるようなことするかよ!!」
火曜「そうだよ。それに月曜が死んだとしても、日曜にメリットは無いじゃないか」
水曜「どゆこと?」
火曜「月曜が死んで、火曜が次の平日になったとしても、
日曜日にとって明日が平日だという点は変わらないだろう?」
水曜「まあ……。日曜日の午後にブルーになるのは変わらないか」
日曜「そ、そうだよ!! 俺に動機なんてないんだよ!」
水曜「それじゃ一体誰が……」
日曜「消去法で考えようよ。月曜日を殺しても意味がない曜日は?」
火曜「まず俺だ。月曜日を殺せば日曜日の次は火曜日になる。
なんで憎まれ役を月曜日から引き継ぎたくないよ」
金曜「僕は月曜日が死のうが生きようが関係ないね。
連休前の立場にはゆるぎないから。みんなの人気者はブレないのさ」
日曜「たしかに……。同じ理由で土曜日も違うか」
土曜「そ、そうだよ……」
曜日たちの視線は水曜と、木曜に注がれた。
日曜「残ったのは水曜日と木曜日か」
火曜「どっちかが、月曜日を殺したんだろう。白状しろ」
木曜「待ってくれよ。別に俺らは月曜日殺しても
週の半ばだからたいしたメリットないじゃないか」
水曜「そうだそうだ。こっちだって動機ないぞ!」
金曜「でもどっちも同じってことはないんじゃね?
水曜日と木曜日で1日ズレてるわけだし」
火曜「そう考えると……木曜日のほうがメリットありそうだよね」
木曜「おいおい! なんでそうなるんだ!」
火曜「だって、月曜日が消えたとき水曜日は今の火曜の立場。
水曜日は週の前半というカテゴリになるだろう?」
木曜「そりゃ……そうかも……」
火曜「今の時点で週の中心にいる水曜日が、
なんで俺や月曜のような憎まれポジション"週の前半"に
わざわざ移動する価値なんてないだろ」
木曜「しょ、消去法で俺が犯人ってことにするのか!?」
金曜「そうとしか考えられないし~~」
木曜「考え直してくれ! 本当に俺は殺してないんだって!!
むしろ同じ憎まれ曜日として月曜日とは仲良かったんだ!」
日曜「そういうのいいから早く白状しろ!」
木曜「だからちがうんだって~~!!」
そのとき、土曜日がテーブルを叩いて立ち上がった。
木曜「ど、土曜日……?」
土曜「ごめん……。俺が月曜日を殺したんだ」
日曜「はあ? なんで土曜日が? 木曜日をかばう必要なんて……」
土曜「本当だ! コレがその証拠だ」
水曜「こ、これは月曜日の……!」
金曜「どうしてあんたが……?
俺と同じく週の人気者ポジションなんだから
わざわざ月曜を殺すメリットないだろ?」
土曜「ただ俺は……満喫してほしかったんだ……」
金曜「はあ?」
土曜「週5日の平日で打ちのめされてボロボロになり。
金曜日の夜には連休に思いをはせるも
いざ土曜日になったら疲れて寝るばかりの日々……」
火曜「……」
土曜「いつもレジャーは日曜日に回される。
俺だって休日なんだ! 日曜までの充電日じゃない!
もっとみんな俺を満喫してほしい!!」
水曜「それで月曜日を……」
土曜「ああそうさ。正直、平日であれば誰でも良かった。
でも月曜日が一番憎まれているから、殺してもいいかと思ったんだ」
木曜「でも……どうして罪を告白してくれたんだ?
黙っていたら、俺が犯人のままになっていただろうに」
土曜「罪の重さに耐えきれなくなった、かな」
土曜日はどこか遠い目をして語った。
土曜「月曜日をこの手にかけたとき、あいつ笑ってたんだ」
金曜「え? 殺されるのに?」
土曜「"これでもう憎まれずにすむ"って。どこか安心してたよ。
そして思ったんだ。俺はとんでもないことをしてしまったんだって」
日曜「……」
土曜「月曜日が憎まれ役として成り立っていたから、
俺や他の曜日たちの価値が生まれていた。
なのに月曜日を失ったら、引き立て役がいなくなって味気なくなる」
土曜「月曜日が頑張っていたから、俺達はまだ価値があったんだ……」
全員がいなくなって初めて月曜日のありがたさに気がついた。
しかしもう前には戻らない。
日曜「それで……これからどうするんだ?」
土曜「自主するよ。それで曜日警察に逮捕して罪を精算していくよ」
水曜「そっか……。真面目なお前らしいよ」
木曜「土曜日ならきっとできるさ。自分の罪を認められたんだから」
土曜「みんな……!」
曜日たちはがっしりと抱き合った。
困難に直面したとき本当の絆を見つけることができるのだ!
金曜「あれ? 土曜が逮捕されたら、土曜日消えるんじゃね?」
金曜はカレンダーを見てふとつぶやいた。
土曜日の消失。
それは地球上に隕石が落ちるよりも衝撃が大きいのは、
すべての曜日たちが納得するものだった。
曜日たちは本当の絆により、ひとつの決心を固めた。
「「「 月曜日は自殺ということにしよう! 」」」
かくして、月曜日は憎まれ役に限界を感じて自殺ということになった。
事件は闇の中で解決した。
なんてこった! 月曜日が殺されちゃった! ちびまるフォイ @firestorage
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