ほたほたや

菜の花のおしたし

第1話 タビさん

急に寒くなったわね。

う〜〜。堪らん。冷え性なのよね。

お風呂にバブを入れてもね。

足が冷えてしまうのよね。

厚手のソックスどこだっけ?


ガサゴソと押入れを探す。


あった!これこれ。

うー。あったかいんだな。

だけどさ、寝る時まで履いてると暑くて

脱いじゃう、、。

そしたらさ、夜中に足が冷えて目が覚めるのよね。


「ほたほた〜や〜🎵

え〜ほた〜ほた〜や〜🎶」


うん?何?

私は窓から道路を見たのよね。

そしたら、一台の三輪自転車がゆっくりと走ってるじゃない。

何だろ?不思議だったから見ちゃったわよ。

やだ!自転車の人と目が合っちゃった。

手を振ってる。

こっちにおいで、おいでってしてる。

怖さ半分で、パジャマにカーディガンを羽織ってクロックスを引っ掛けてアパートのドアを開けてエレベーターに乗っていたわ。


アパートの出入り口のドアを開けると

三輪車の人が立っていた。

三輪車の後ろには三角屋根の小さな家?が

載せてあった。

しまった!!おかしな人だったんじゃない?

逃げようか?と思ったの。


「あー、私はおかしな人ではありませんよ。

まあ、おかしな猫又とでも言いましょうか。」


猫又って、、。そんな馬鹿な。


「そんな馬鹿なじゃありません。

猫又になると人間に化けることもできます。

でも、ほら、尻尾はね、、。」


そう言って尻尾を見せてくれたの。

うわーーっ。2本あるーーー!!

初めて見るってそりぁそうよね。


「うにゃ、そんなに喜んで頂けると嬉しいですね。

ところで、足冷えでお悩みですね?」


「はい。布団に入ると冷えて眠れないの。

だから冬って季節が好きなのに苦手なの。」


「では、この猫さんをどうぞ。」


「猫?ダメよ。うちは猫は暮らせないの。

賃貸なんだもの。」


「大丈夫ですよ。うちの猫さんは誰ひとり気がつきません。まあ、今晩一晩お試しくださいませ。うにゃにゃにゃ。」


「あのう、レンタルって事ですか?

だとしたら、お代金はどうなるんでしょう?」


「それは、チュール三本です。

できたらマグロ味で。」


「はあ、、。そんなんでいいんですか。」


「はい。

では、タビさぁーん!お仕事ですよ。」


猫又さんは、三輪車の後ろの小さな三角家から

真っ黒な猫を抱っこして来た。


「この猫さんはタビさんです。

ほら、黒猫なのに手足は白いでしょ?

だから、タビさんなんですよ。うにゃにゃ。

あ、タビさんは明日の朝にドアをカリカリしたら開けてあげてくださいね。

その時に、チュール3本を背中のリュックに

入れて置いて下さい。」


「あ、それでいいんですか?

あの、、、。」


質問しようとしたら、物凄い勢いで三輪車は走り去ってしまった。

「クシュン、。」

うー、

寒いからとにかく部屋にもどろ。

良く見たら、ほーんと足袋履いてるわね。

ああー!

明日の朝までにチュール3本!!

確か、近くのコンビニにあるはず。


「タビさん、チュールを買いにコンビニに行ってきますね。留守番お願いします。」


タビさんはコクンとうなづいたような気がする。

コンビニでチュールを買った。マグロ味。

これでよし。

家に帰るとタビさんは私のベットにちょこんと

寝そべっていた。

本当かどうか?試そう。


歯磨きしてと、あったかい靴下は脱いでおこう。ベットの布団の中に滑り込む。

あー、冷たいなぁ。足、ジンジンするぅ。


タビさんが私の顔の所に来た。

そして布団の中をうごめいて、、、。


あ、あったかぁーーーい。

タビさんだ。丁度いいところに来てくれてる。

人肌じゃなくて猫肌なのね。


私は気がつかないうちに眠りに落ちた。


タビさんが顔をペロペロ。それで目が覚めた。

久しぶりに眠れた。気分がいい。


「タビさん、ありがとう。お陰で赤ちゃんみたいに寝ちゃった。」


タビさんはドアをカリカリしてる。

あ、お帰りなのね。

チュール3本だけど、4本にしちゃいますよ。

お手紙も入れますね。

また、お願いします。ほたほたやさん。


ドアを開けたらタビさん

「まいどにゃり。」って鳴いたの。

ほんとなの。

聞き違えじゃないのよ。

誰にも話せないけどね。








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