第2話 磁石

明と離れて一年が経つ頃、ある冬の寒い日珍しく吹雪いていた。


僕はこの日、朝から熱っぽかったが耐えられる範囲内なので会社へ向かった。


でも駅で激しい頭痛に襲われうずくまると、

誰かが僕を立たせて椅子に座らせてくれた。


そして…優しく包み込んでくれた。


…明だ。


「お前何やってんの。熱出てんじゃん。」

「…お前こそ何やってんだよ…仕事行けよ。」

「ほっとけるわけないだろ」

「…ほっとけばいいじゃん。」

「まだ根に持ってんのか?」

「…もってる」

「…ごめんね。」

「……(か、可愛い。熱のせいか。。。)」


僕が手を伸ばして明の頬に触れると、


「優成、お前女いるの?男でもいいけど。」

「居ない。別れた…。お前のせいだ。」

「あたしのせいか…。」

「…」


僕は体を起こして熱い体で明を抱きしめた…。


「…お前こそどうなんだよ。」

「一人前が忘れられなくて速攻別れた。」

「…今は?」

「寂しく一人。…そいつがいればな…。」

「……。」

「一緒に風邪引いてやってもいいぞ。」


「……熱い。」

「病院行くぞ。」




―――――――――――――――。


『御家族の方ですか?』

『妻です。』

『お前…』


看護師に聞かれて僕が答えると明が少し驚いていた。


熱が出てるので離れた場所で待たされた。


「いつからお前の『妻』になったんだよ」

「格上げだ…良きにはからえ…」


僕は明より背が低く、また細い。

ここでも抱き寄せられていた。


「あたしよりお前が『妻』って感じだけどな。」

「……一緒に帰ろ。」

「安心しろ。お粥くらいなら作れるから。」

「砂糖入れるなよ。」

「大丈夫。マヨネーズ入れてやるから」

「自分で作る…」

「お前は寝とけ。」



―――――――――――――――自宅。


「優成、食べるか?」


僕の様子を見に来た明を腕で引き寄せた。


「わっ…」

「こっち来いよ。」

「あのな、せめて熱落ち着いてから誘えよ。」

「……。」

「…ったく。仕方ねぇな。」


明は僕の横に来て包み込んでくれた。


「明が風邪ひいたら看病してやるから。」

「いいだけわがまま言ってやるから覚悟しろ。」

「可愛く言えたら答えてやる……。」


「……。」

「……。」


「優成、戻らない?…あんたが愛しくてたまらないんだよ?…あんたがいればあたし幸せなんだよ…」



僕は明の胸の中で眠りについていた。

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