ハメられて追放された悪役令嬢らしいですが、爬虫類好きの私にはドラゴンだってサイコーです!

美杉。節約令嬢、書籍化進行中

第1話 大切な思い出

「ルナ! ボクは政略結婚とかじゃなくて、ちゃんと君を愛するから、ボクの妃になってくれ」

「……アイン様」


 アインは先ほど摘んだばかりの小さな花の束を私に渡した。

 真っすぐな青い瞳と風に揺れる、金色の髪。


 つい先ほど彼の父である国王様と、公爵である私の父との間で私たちの婚約が結ばれたところだった。


 貴族の結婚は親が決めるもの。

 幼い私たちもそれは知っていた。


 自分の意思はそこにないと分かってはいたけど。

 別にアインのことが嫌いってワケでははない。


 でも物語みたいな恋物語は出来ないんだという現実、それが悲しかった。


「ありがとうございます、アイン様」

「おう」

「良かったね、ルナ。アイン様となら、きっと幸せになれるわ。二人とも、すごくお似合いだもの」

「貴族間の結婚とはいえ、これなら大丈夫そうですね。この国も安泰だ」


 私たちのやり取りを見ていた、幼馴染である侯爵令嬢のサーシャと宰相の息子ランドが声をあげた。


 こうやって四人で中庭で隠れて遊ぶのも、今日で最後。

 私は明日からお妃教育が始まり、アインも国王教育が始まる。


 子どもらしい時の最後に、四人でこうやって笑うことが出来て私はただ幸せだった。


「みんな大好き」


 どんなに辛い事がこの先あっても、この思い出があれば大丈夫。

 大切な人はこんなにも近くにいるのだから。


 この時は本当にそう思っていた――

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