転生祓魔師・白虎夜虎~平安から続く名家に転生した俺は、赤ちゃんの頃から努力して世界最大の呪力量を持つ最年少特級祓魔官に認定されました~

KAZU@灰の世界連載中

第1話 平凡な転生


 ゴロゴロゴロ!!っと、雷鳴が鳴る嵐の夜。

 外からは生き物とは思えない化け物の叫び声が、無数に鳴り響く。


「俺の息子を食いに来たな。シンどもめ……」


 そこには、男が一人立っていた。

 腕をまくって、前を見る。


 筋骨隆々の男。守るように立つその背には、日本家屋があった。

 そして目の前には、黒い鬼のような化け物が群れを成していた。


「…………つまり、それほど俺の息子はお前たちにとって脅威ということだな!! さすが、俺の子だぁぁ!! だが、俺の息子には、指一本触れさせん!! 雷槍!!」


 襲い掛かる化け物。

 男は、体に稲妻を纏い次々と黒い鬼を腕一本で貫き、祓っていく。


「ここは父さんが命を懸けて守る!! だからお前も、頑張って生まれるんだぞ!! 夜虎!!」





「オギャ…………」

(あれ……俺…………なんで)


 目を覚ました時、俺は体が動かなかった。

 体が冷たい。

 どうしようもなく……冷たい。

 なんだ……これは。


 俺は、病院で誰からも必要とされず……ただ一人孤独に死んだはず。

 まさか植物状態? 怖い。

 真っ暗で何も見えない。怖い……。


「お…………ぎゃ…………」

「はぁはぁ…………生まれた……の?」

「奥様!! 心臓が止まりかけています!」

「そんな……だめよ、夜虎!! だめ! 夜虎!! 泣いて!! お願い! 泣いて!!」


 和式の部屋で、助産師に赤子を渡された女が呼吸をしていない我が子を抱きしめる。

 その手には緑色の光が灯り、必死に泣いてと願う。


(あぁ……なんか温かい……なんか……すごく)


「香織!! どうした!!」

「あなた!! 夜虎が!!」


 扉をバン! と開けて入ってきた父親は、ボロボロで全身から血を流していた。

 自分の手も添え、我が子であろう赤子を抱きしめる。

 そして優しく我が子と妻を抱きしめ、懸命に応援した。


「夜虎!! 目を覚ませ!!」


「お……ぎゃ」

(なんだろう…………これ。でも…………まだ…………寒い)


「くっ…………少し、呪力を流すぞ!!」

「お願い、あなた!!」

 

 バチッ!!


(いてぇ!?)


 まるで静電気のように体がピリッとした。

 直後体に熱が戻った。


「オギゃ……」

「夜虎!!」

「よし!!」


 赤子からかすかに声が聞こえた。

 二人は、赤子をぎゅっと抱きしめる。

 手が少し動く、声が少しだけ漏れる。


夜虎やとら!! 夜虎やとら!!! 頑張って! まだ! あなたは死んでないわ!! 目を覚まして!!」

「頑張れ!! 俺の子だろう!! 頑張れ!! 頑張れ!!」


 母と父は必死にその手を握った。

 何度も頑張れと叫んだ。

 その気持ちに応えるように、その赤子は大きく口を開いて。

 

「オ…………オギャーー!!」


 生きたいと叫んだ。


「奇跡です。奥様!! 旦那様!! この子は……ご子息は、奇跡の子です!!」


 部屋に赤子の声が響き渡る。

 母は泣きながらその子を抱きしめた。

 ありがとう、ありがとうと何度も言いながら。

 父も同じように抱きしめた。


「きっとこの子は強くなるわ……だってこんなにも強く生きたいって言ってるんだもの」

「あぁ! きっとこの国を……日本を守る立派な祓魔師になるぞ!! 俺なんか簡単に超えていくだろう!!」


 二人は我が子を泣きながら精いっぱいの愛をこめて抱きしめる。

 周りも涙を流しながら、喜んでいる。


(…………へぇ?)


 俺だけがこの状況を理解できなかった。






あとがき。

新連載開始、本日10分おきに、6話まで一気に公開。

6話は最高の話になってます。そこまで読んで面白くなかったら、土下座しますんで、ぜひ読んでみてください。

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