【5000000ⓟ】★妖刀使いの極悪姫、吸血鬼×現代忍者に転生、ダンジョン攻略配信で人間になる(予定)★
魔石収集家
1 妖刀使いの極悪姫
戦国の乱世、誰もがその名を聞くだけで震え上がる姫がいた。
彼女の名は豊臣 栞(しおり)。豊臣の姫として絶大な権力を手にした彼女は、その冷酷さと無慈悲さゆえに「極悪姫」と呼ばれ、民衆から恐れられていた。
誰もが栞の顔を見るだけで身を縮め、彼女の怒りを買わぬように息を潜めて暮らしていた。
栞はただの美貌に収まらぬ妖しげな美しさを持ち、まさに人を虜にする魅力と恐怖の象徴だった。
月光に照らされたその肌は白磁のように輝き、触れれば消えてしまいそうな儚さが秘められていた。
漆黒の髪は夜の闇そのもの、暗がりに絹のように広がり、わずかな風にも揺れながら光を飲み込むように消えていく。彼女の瞳には深い紫色の闇が宿り、その奥には底知れぬ何かがちらりと光る。
見つめられた者はその瞳に囚われ、奈落へと引き込まれるような錯覚を覚えるだろう。
冷ややかな微笑を浮かべるその唇は深紅に染まり、まるで一言も発せずに周囲を支配していた。
栞がその場にいるだけで圧倒的な威圧感が広がり、彼女が微かに笑みを浮かべるだけで、人々は罪深い美しさに捕らえられてしまうのだった。
栞には一つ、異様なまでの執着があった。
それは刀剣──特に妖しげな力を秘めた美しい妖刀への執着である。彼女の居室には数々の名刀が飾られていたが、その中でも栞が最も愛し、大切にしていたのは「黒炎の霊刃」という妖刀だった。
刀身は深淵の闇のような黒い光を放ち、柄には紫の絹が巻かれ、鍔には鬼の面が彫られている。
そして、この黒炎の霊刃には栞と共鳴し、冷酷な魂に応えるように振るわれた存在が宿っていた。
その名は「神威(カムイ)」。
ある日、栞は黒炎の霊刃を腰に差し、城下の村から献上品を受け取る場に向かった。村人たちは心を込め、彼女のために用意した品々を差し出した。野菜や果物、手作りの飾り物──どれも彼女に喜んでもらいたい一心で贈られたものだった。
しかし、栞はそれらに一瞥をくれるだけで、軽蔑の笑みを浮かべた。
「これが私にふさわしいと思っているの?」
その冷たい声が響くと、村人たちは恐怖に震え上がり、無言で頭を垂れた。彼女は贈り物を蹴り飛ばし、果物が転がり、土が舞い上がった。
彼女の背で、黒炎の霊刃が微かに不気味な光を放っていたが、それはまるで「またか…」と諦めの微笑を浮かべているようでもあった。
栞の心は日を追うごとに黒炎の霊刃に侵食され、次第に非道な行いを繰り返すようになっていった。だが、栞はその非道さがやがて己に返ってくるとは知る由もなかった。
ある夜、城下の人々が密かに反乱を企て、ついに城に火を放つ事件が起きた。炎が城を包み込む中、栞は怒りと共に黒炎の霊刃を引き抜いた。
「私に逆らうとは愚かな者たち……皆、滅ぼしてくれるわ!」
栞のその言葉を、神威はただ静かに聞いていた。今や、栞が暴力によって支配することしか知らぬ冷酷な姫になってしまったことを見届けながら、「やはりこうなる運命か」と、無情ながらもどこか哀しげに見守っていた。
次々と燃え広がる火の手が彼女を包み込み、ついに栞は追い詰められた。彼女の目に映ったのは、かつて彼女が支配し、恐れさせた人々の怒りと悲しみの顔であった。
逃れられぬ炎に囲まれ、栞は初めて己の非道さと、呪われた刀に囚われていたことを思い知る。
「こんな、はずでは……」
燃え盛る炎の中、栞は膝をつき、冷たい汗と共に静かに息をついた。命が尽きゆく瞬間、彼女の心に初めて後悔が生まれ、微かな良心が息を吹き返そうとしていた。
「もし……もう一度生き直せるなら……」
その言葉が彼女の口からこぼれた瞬間、栞の命は尽き、闇へと飲み込まれていった。
こうして、極悪姫・豊臣栞の生涯は幕を閉じた。
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栞の最後の言葉が闇に消え、彼女の命が尽きたその瞬間、黒炎の霊刃に宿る神威は、何も語らぬまま、ただ冷静に、しかし心の奥底で何かが静かに揺れるのを感じていた。
彼にとって、栞との日々は輝かしく、同時に切なくもあった。
彼女の手で振るわれ、共に数々の敵を屠り、人間の想像を絶する圧倒的な力を示してきた日々。
その非情さの中にも、あの一瞬の輝きが確かに存在していたのだ。
しかし、その日々は短く、栞が周囲を恐怖で支配することしか選ばなかったことで、彼らの物語は断たれてしまった。
「楽しい日々であったが、終焉はあまりにも…」
そのつぶやきと共に、神威の中には静かに決意が生まれていた。次こそは、共に歩む者が真に自らの道を見つけ、ただ冷酷さに身を委ねるのではなく、力と意志をもって強くあれる者であることを望む。そのためには、神威もまた、少しは人間たちの愚かさや矛盾に耳を傾け、己の力をただの破壊だけでなく、新たな旅の支えに変えることができるよう、彼のあり方を変える覚悟が必要なのだと感じていた。
「我の言葉も届かぬままであった…次なる相棒こそは…」
神威の声は静寂に溶け込み、闇の中で誓いへと昇華された。次こそは、もっと長きにわたる旅路を共にし、その者が栞のように非情な結末を迎えぬよう、余も見守り続ける。もしも相棒が迷いに陥る時があれば、その刃を通じて警鐘を鳴らし、闇に引き込まれぬよう導こうと、神威は静かに決意を固めたのであった。
「そう…次こそは」
その刃に秘められた力は、ただ力そのものを求める者にしか応えぬ冷酷なものではなく、時に支え、時に導く柔和ささえも湛えようとしていた。
かつての栞のような強さだけではなく、冷静な覚悟と共に歩む真の相棒としての価値を求める者が現れる日を、神威は待ち望んだ。
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