時空を超えた散歩
私はあくびをして吊らしたライトの電気を消す。
人が少なくなってきただろう。
今は涼しくなってきたから、
どこまでも歩けそうだ。
それにしても眠たい。
またひとつ大あくびをする。
まだ風呂も入っていない。少しだけ歩こう。
玄関扉を開け、私は夜の街を歩く。
やはり涼しい。これ以上ないほど涼しいのだ。
見る影もなく、閑散とした街で一人闊歩する。
こうしていつものルートを何気なく歩く私は、音楽でも聴こうと、
胸ポケットからイヤフォンを取り出す。
躊躇なく音量を上げて音を鳴らす。
だん、と何かと肩をぶつかった。
気のせいか?気のせいではない。
なんだと、後ろを振り返るが何もいない。
音楽が切れた。電波も立っていない。
それよりも景色が移り変わっていた。
ここにあったはずの家がない。
私は歩みを進める。
あれ、畑なんてあったっけ。
また肩がぶつかる。
家なんてなかったように真っさらな風景。
野畑に田んぼ。
またぶつかる。
山か?ここは山だったのか?
再びどん、とぶつかる。
この辺りに城があったとは聞いていたが、
本当に向こう側に大きな城があった。
まさか、時間が逆流しているのか。
肩をぶつけて早急に戻りたい。
早く、時間を戻してくれ。
恐怖と畏怖が頭をかき乱す。
早く、早く、ぶつかれ。
ぶつかってくれ、
私は防御するような体勢で前へ前へ進む。
そこにいるんだろいるんだろ?
早くぶつけてくれ、俺の肩を。
なあ、ぶつけてくれよぶつかってくれ。
暫く歩いた。ぶつかってくれ。
私は夜道を足早にあるく。
このままの速度で私は歩き続ける。
帰りたい帰りたい。
早く肩をぶつけてくれ、ぶつけてくれ。
早く、
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