夏の花歌

kmykei

エピローグ: 至日花頌

暗く重い空が昼を覆い、灰色に染まっている。まるで夜が先に訪れたかのように。太陽の光は見えず、宇宙の中心がこの世界から消え去ってしまったかのようだった。

しかし、その暗闇の中に、彗星がひとつまたひとつと空をよぎり、柔らかな光を放っていた。静寂に満ちた空に、まるで穏やかな歌声が響き渡るように

その神秘的な光景は、流れる自然の美しさと共に、魂を震わせるような歌で満たされていた。


不安が立ち込める中、世界は終わりを迎えるかのような美しさで彩られている。その美しさはどこか苦く、すべてが無へと消えゆく前の最後の旋律のようだ。

光がきらめき落ちる中、私は千夏の前に立ち、そっと彼女の名を呼ぶ。

「千夏よ、」と、心の奥から押し出されたような声で。

「この世が朽ち果てようとも、汝はなお生きるべし。この闇に負けぬよう、心強く持て。」


彼女の瞳を見つめ、その奥にわずかな光を探す。「汝が我に語りし言葉、夏の花は嵐に負けず咲き続ける、と。その花こそ汝なり、千夏よ。すべてが消え去るとも、汝は耐え、暖かき光を世に与え続けるべし。」


千夏は黙り込み、唇が微かに震えている。彼女の心がどれほど傷つき、これまでに何があったのか、そのすべてが伝わってくるようだった。しかし、私は知っていた。彼女がこの言葉を、いや、この想いを心で受け止めてくれることを。


「荒れ果てし土に咲く花のごとく、汝には咲き続く力あり、千夏よ。暗き闇に己を奪われるな。汝の歌を、夏の歌を、この終わりなき暗闇に響かせ続けよ。」

僕の声は低く、囁きのように響き渡る。空に舞う彗星の光が、僕たちを優しく見守っている。


今、僕の言葉が彼女の心に届いてくれることを祈る。夏の暖かい歌のように、この冷たき暗闇の中で。


僕は…ここに居続ける、何千の夏を待ちながら…君と一緒に歩ける日を

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