繋神

ペトラ

第1話 繋神に成れ

三つの顔を持ち、強固な脚で地を歩く。

地方に残る伝説-神と交流し、あの世を繋ぐ。


「繋神」


20××年.某日

今日も家を出て、大学に向かう。

最近買ったお気に入りのスニーカー。

広い大学を歩くには、丁度良い。


スニーカーに足をねじ込むように履き、

パソコンが入ったロゴ入りのリュックを背負う。


鍵はオートロック。自分が開ける時もまるで機械が開けたような音が鳴る。


いつも同じような天気。けど、空がいつもより青々としていて綺麗だ。ずっと空を見ていたい。


そして暖かくなってきたアスファルトの上を歩く。


「いってきます」


てくてくと歩いていく。フォルテナの新作を思い出して、いつ行こうか考える。土曜日は、午前にバイトを入れた。その後に飲みに行こう。課題を思い出す。昨日は遅くまでチームのみんなと制作していた。少し眠たいけど、授業耐えれるかな…。


駅は、ゆったりと大人が過ごす時間になった。通勤ラッシュが終わり、日がぽかぽかする頃だ。


電車が到着する5分前に到着。10分前だと、脚が動けと言わんばかりにムズムズしてくる。トイレも考慮して5分前だ。


電車がのせてくる風は、気持ちい。少し汗ばんだ体をすっと冷ましてくれる。


可愛い赤ちゃんがベビーカーに乗っている。今は寝ている。母親は、外の風景を見、私は赤ちゃんを見る。たまらなく可愛い。


大学の最寄り駅に近づくにつれ、学生が増えてくる。この電車は丁度いい時間に到着する。


学生がぞろぞろと降りる。私はトイレに行った。トイレから出て、改札に向かう。


ICカードで、改札を通り、外に出る。少し暑くなってきた。日傘は常備している。


踏切へ向かう。反対側にも出口をつけてほしいものだ。学生が降りる駅は混雑する。踏切でも大渋滞になる。


止まった。体が止まった。目が踏切の中に止まった。女の子が踏切の中にいる。踏切は下がっている。女の子は踏切の中で動かない。周りには誰もいない。


スマホを見ていた。なにをしてるか分からない。もう電車が来てる。目の前でひかれる。


急いで踏切をくぐり、声をかけた。「こっちきて!にげて!!!」女の子はただスマホを見ている。駅の真横の踏切だから、スピードは落ちるから- すごい勢いで体に衝撃が走り、ただ頬に水がついたことだけは覚えている。


体という感覚がないまま、目が覚めた。

死んだ 死んだ 死んだ 死んだ


「死」という文字と概念が、段々と鮮明になってきた。体という実体がないのに、視える。


だから、動じないようにした。「死」を考えないようにした。まだ生きてるかもしれない。今ここで下手なことはできない。下手なことをして死んだら、、 今までで、1番「死」と向き合っている。


「死」という可能性がある以上、「死」は怖いものでは無い。どうなるか分からないけれど、ただ待つ。視えるものはただ真っ白。それだけ。


生きてる時のことは考えない。「真っ白」「生」「死」ただそれだけと向き合う。


「繋神」。聴こえる。耳はないが聴こえる。

「あなたは繋神になりなさい。地を歩き、神の話を聞き、各地に伝承していくのです。神は繋がってる。と」


もう忘れられない。何をしても忘れられない耳ざわりだった。正直、よく分からない。まだ意識が戻るチャンスがあるのか。。


時間の感覚がない。あの言葉からどれほど経つのか。少し動きたい。ない脚がうずうずする。


すると、真っ白がなくなり、体がひっくり返って、転んだ。痛「くーーーうぅぅ…!!」隣で人が痛がってた。「…!!大丈夫ですか!!……?」もう一人いる、子供だ。小学生の男の子。少しぼーっとしている。「あの、2人とも……大丈夫!!?ですか……!!!」


「ああ…大丈夫だ…」見上げた人は、白髪のおじいさんだった。いや、白髪だが、そこまで年はいってなさそう。おっさん、くらいか?


私はこういう時、無言を貫く。私だって気が動転している。体がある。しかも自分の体。そうだ!衝撃!電車にひかれた!


顔を触るが傷はなさそう。体も無事だ。これは…何?布?これが服か?転生したのか?


「…あのー、皆さんどうしましたか?」

喋ってしまった。しかも日本語。このおっさんには通じたけど、子供には通じるのか?


2人とも顔は日本人に見えるが、日本人なのか?色々気になって何から話せばいいのか分からない。


「気がついたらここにいた…」子供が自信がなさそうに答える。続いておっさんも同じだと言った。


「いやぁ〜、私も気がついたらここにいて笑」

と和ませようとしたが、和んでる場合じゃない。

単刀直入に聞いた。


「私は死んで気がついたらここにいました。お2人はどうですか?」

何かハッとしたような顔でおっさんが「俺もだ…」と言った。子供はコクコクと迫真めいた顔でうなずく。


3人で話し合った。3人とも日本人で、死んでしまって気がついたらここにいた。そして


「繋神」


「あなたは繋神になりなさい。地を歩き、神の話を聞き、各地に伝承していくのです。神は繋がってる。と」


繋神になれとみんな言われた。一言一句記憶にはっきりと残っていた。


動揺が隠せないまま、少し乾いた土に座り、太陽が照る中、話す。まあまあ暑い。


この状態は人間なのかとか、異世界なのかとか、死ぬのかとか、色々気になる。


2人とも放心状態だ。

どうしようと思っている中、子供が遠くを見ている。「あれは建物…?」と指をさした。

指がさす先を見ると、建物がいくつか見えた。


もしかしたら街かもしれない。

とにかく何か情報がほしい。

「2人とも行きましょう」と言い、3人は立ち上がった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

繋神 ペトラ @123house

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る