#3 混乱

有馬直清が目を開けると、自分が図書館の机に座っていることに気がついた。目の前にはまだ開かれていない本の山があり、周りには見慣れた図書館の風景が広がっていた。手には使いかけのペンを握っていて、まるでさっきまでノートを取っていたかのようだった。しかし、彼女は心の奥で、事がそんなに単純ではないと感じていた。


さっきまで……彼女は確かにあの森にいたはずだ。樹木が立ち並び、神秘的な雰囲気に包まれたあの場所で、彼女は確かに何かの存在を感じていた──白いドレスを着て猫耳のついた少女がそこに立ち、静かに彼女を見つめていた。そして今、その光景は夢のように遠く、まるで現実とは異なる次元に存在しているかのようだった。


周りの図書館は依然として静寂に包まれ、学生たちはそれぞれの本に集中しており、誰も彼女の混乱に気づいていない。彼女の内心は波立ち、時間が一瞬止まったかのようだった。先ほどの記憶をつなぎ合わせようとしたが、時間の空白が彼女を混乱させていた。


「いったい……何が起きたの?」有馬は小声でつぶやいた。


だが、彼女には知る由もなかった。監視カメラは、彼女が突如消えた瞬間を映し出していたのだ。その消えた三時間の間、図書館全体が混乱に陥り、彼女の姿が突然消え、そして原因不明で三時間後に再び現れるという不可解な出来事が起こっていた。


彼女は全く知らなかったが、この件は大きな騒動を巻き起こそうとしていた。ニュースが報じられると、世間の注目は彼女に向けられることになる。


***


有馬はただの幻覚だと思っていたが、その日の夜、テレビのニュースが彼女の平穏を打ち破った。


「本日午後、東京のある大学の図書館で不可解な事件が発生しました。ある女子学生が図書館内で突然姿を消し、三時間後に再び神秘的に現れるというもので、この現象は監視カメラによって記録されており、大規模な騒動を引き起こしました。この女子学生の名前は有馬直清で、現在、学校側は事件の真相を調査中です。」


ニュース映像には、図書館の席に座る有馬の姿が映し出されていた。彼女が図書館の席で突然消え、また何の前触れもなく元の場所に現れる映像が何度も再生され、その映像を見るたびに彼女は背筋が凍る思いだった。


「こんなことが……私、図書館から離れていないのに……」彼女は小さくつぶやき、この出来事が現実であることを信じられなかった。


寮の部屋で、有馬のスマホは鳴り続けていた。多数のメッセージや電話が寄せられ、そのほとんどはクラスメートからの好奇心からの問いかけや心配の声だった。彼女は誰にも返信する気になれず、頭の中は混乱の渦に巻き込まれていた。


***


翌日、事態はさらに複雑になった。有馬は学校の事務所に呼ばれ、記者のインタビューを受けることになった。


「有馬さん、何が起きたのか教えてもらえますか?」記者がマイクを差し出し、カメラも彼女に焦点を合わせて、答えを待ち望んでいた。


有馬は頭がぼんやりとし、思考が混乱していた。何を言えばいいのかまったく分からず、ただ白いドレスを着て猫耳をつけた少女のこと、そしてあの現実とも夢ともつかない森のことだけが頭に残っていた……彼女は説明したかったが、どこから話し始めればいいのか分からなかった。


「猫耳女……真実……森……霊異……?」彼女は小さくつぶやき、表情はどこか茫然としていた。


記者たちは顔を見合わせ、これらの曖昧な言葉をどう解釈するべきか困惑している様子だった。しかし、この言葉を特に敏感に聞き取った者がいた。

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