第18話 工藤 冴子 ⑮
あれから私の私生活は、少し派手になった。
自暴自棄になれば、気持ちが少し楽になれると解ると、なんだか落ちて行くように女子高生ライフを楽しむようになっていた。
友人関係も派手になると、ファッションも自然と派手になる。
こうなると、自分の地位が上がったように錯覚して、クラスメイトの地味な女子やモヤシ男子を見下すようになっていった。
神田さんとは、話をしなくなった。
こうやって女子グループを作っても、きっとこの中には人型ルアーが混ざっている。
でも、そんな事、もうどうでも良かった。
今が楽しければいい。
幸い、私の周りには男子のルアーは居ないように見えた。正宗くんに比べたら、周囲の男子がみんな豆程度に見える。まあ、モヤシ君達だから豆で間違っていないのか。
部活も疎遠になり、私は幽霊部員になると、放課後は女子グループでカラオケやショッピングに行くことが多くなる。
なんとなく、楽しい。だからそれでいい。
グループの友達に彼氏が出来たと言えば、皆はその話で盛り上がる。
彼氏か・・・・ちょっと羨ましい。
そんな時、他校の男子と合同でカラオケと言う話が持ち上がり、私たちは男女で遊ぶようになる。
「工藤さんって、彼氏いるの?」
ああ、本当にチャラい感じのが色々聞いてくる。
顔はまあまあだけど、正直、人間が薄っぺらい。
これは良くないな、どんな男子にも正宗くんと比較してしまうんだから。
新しい一歩を踏み出さなきゃ。もう正宗くんはいないんだから。
私に興味津々だった彼は、カラオケを抜け出して少し外に出ないかと誘ってくる。
・・・・まあ、少しくらなら。
「ねえ、工藤さんは普段どんな曲聴くの?」
他愛のない話。どうでもいいと思ったけど、付いてきた以上は少しくらい話聞いてあげないとな。
何故か会話が突然止む。彼は私をじっと見つめると、顔を近づけてきた。
え? なに? まさかと思うけど、これはキスに向けたソフトランディング?
・・ えー いや、ここまでの会話のどこに、キス要素があったんだ?
なんなの? この人?
こいつもルアーか何かだろうか。
自暴自棄な私は、なんだか話のネタになるから、まあいいか、程度に思って、彼がこのまま何をしてくるか、試しに無抵抗でいた。
そのとき、数人の明らかに柄の悪い大学生風の男達が、ヒューヒュー言いながら、私たちを取り囲む。
ちょっとちょっとちょっとちょっと!
さすがに話のネタを通り越してますけど!
さっきまで私にキスを迫っていたあいつは、携帯が鳴ったフリをして、その場から立ち去って行く。
・・この世に正宗くん以外のまともな男はいないのか?
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