第11話

 奴隷仲間のみんなと別れた後。遥斗とリセリアは静かな森の道を歩き始めた。重い別れを経験したばかりの遥斗は、未だに胸の中で複雑な感情が渦巻いていた。だが、目の前のリセリアの背中はとても頼もしいもので、リセリアについていけばなんとかなるのではないかと感じていた。


 しばらく歩いたところで、リセリアが突然足を止め、森の奥へと鋭い視線を向けた。


「どうした?」


 と遥斗が尋ねる。


「……誰かがいる」


 リセリアはそう言って森の奥をじっと見つめた。


 遥斗は緊張し、リセリアの横で気配を探ろうとするが、周囲は静まり返っている。だが、リセリアの様子がただ事ではないことから、彼女が何かを感じ取っているのは明らかだった。


 その時、遠くの木立から複数の足音が近づいてくる音が聞こえてきた。


「私についてきて」


 と彼女は低く囁き、遥斗を森の奥へと引き連れて走り出した。

 森は入り組んでいるが、リセリアはスイスイと遥斗を誘導していく…


 二人は静かに歩を進め、追手に見つからないよう森の茂みをすり抜けていった。やがて、小さな川辺に辿り着くと、リセリアは川の音に耳を澄ませながら小声で言った。


「ここまで来れば、しばらくは安全なはずよ」


「リセリア、一体どうしてこんなにこの森に詳しいんだ?」


 遥斗は、自分でも驚くほど真っ直ぐにリセリアを見つめていた。彼の問いに、リセリアは少し戸惑ったように視線を逸らしたが、深い息を吐いて言葉を探しているようだった。


「………それは……」


 リセリアの声はどこか震えている。


 遥斗はその表情から、彼女が抱える秘密の重さを感じ取った。しかし、何も知らないままこの旅を続けることに不安を感じているのも事実であり、詮索しようか迷った。


「わかった、無理には聞かないよ。でも、いずれ、君が話せる時が来たら教えてほしい」


 リセリアは遥斗の言葉に一瞬驚いたように見えたが、すぐにほっとしたような微笑みを浮かべ、静かに頷いた。


 だが、次の瞬間、彼女の表情が一変し、鋭い目つきで背後の茂みを睨んだ。その瞬間、遥斗も背筋が凍りつくような異様な気配を感じた。茂みの奥から現れたのは、黒装束に身を包んだ刺客のような集団だった。


「何者だこいつらは?」


 と遥斗が低い声で尋ねる。


「私を狙っているのかもしれない」


 リセリアは淡々と言うが、その目には確固たる覚悟が宿っていた。


「まずはどうにか切り抜けよう」


 二人は互いに頷き合い、追手に対抗するために身構えた。リセリアは静かに両手を広げて集中し始めた。彼女の手から淡い光が放たれ、周囲の空気が微かに揺らいでいる。


「リセリア……」


 と遥斗が驚く。

 遥斗は、リセリアが秘めている力が想像以上のものだと確信したが、今は目の前の敵に集中するしかなかった。


 刺客たちが一斉に襲いかかってくる中、リセリアもその特殊な力で敵を一網打尽にした。


 戦闘が終わると、リセリアは疲れ果てたように膝をつき、息を整えた。遥斗が心配そうに近寄る。


「大丈夫か?」


リセリアは静かに遥斗の手を払い、真剣な表情で彼を見つめた。


「今日は力を使いすぎたみたい。大丈夫」

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