冬兄と夏ショタ

風宮 翠霞

プロローグ

「な、なつくん……?」


自分の顔が、真っ赤な自覚はある。

俺が下がっても、それ以上の距離を詰めて来る幼馴染の男の子は……いつの間にか、俺が感じているよりも大きくなっていたようだ。


「な、ふゆにい……僕の“好き”と、冬兄の“好き”はまだ違う?」


僕、もう中学生だよ?


耳元でささやかれる声に、マズいと思う。

このモードに入ってしまった夏くんは、俺には止められないっ……!!


「僕が昔、キズモノにしちゃった責任取るから……ね? 冬兄だって、ずっと一緒にいるって言ったでしょ?」


「キズモノって……!! ただ、怪我しただけだろっ!!」


傷跡が残る俺の左手首をゆるゆると撫でる夏くんに、無駄だと知りながら反論して、そして必死で頭を回していた。


考える事はただ一つだけ。


どうしてこうなった!?


子供の言う事だと、本気にしなかったからか?

弟が出来たみたいで嬉しくて、甘やかしたからか?


どれだけ考えても、夏くんの声に思考を邪魔されて答えは出なかった。

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