召喚獣は剣でした!?

天星 水星

第1話 召喚獣を呼ぶ

「う――――!」

「こら、落ち着きなさいレイ!」

「わかってるけどー!」


 でももう少しで私の召喚獣を呼び出せるんだからしょうがないじゃん、という言葉は胸に秘める。まあ夜だから落ち着けと言われるのはわかる。だが言葉にはでなくても顔には出てたのか、父さんが援護をしてくれた。


「まあしょうがないだろ。俺だってその日は落ち着きがなかったぜ」

「でもレイは女の子でしょ! 普段でも落ち着きないのに……」


「(そりゃあまあ前世は男だったから女の子っぽくはないだろうけど。でも少しは女の子っぽくなってるはずでしょ)」


 そう俺には前世がある。といっても詳しくは覚えてない。死ぬ前まで何していたかわからないし、名前も知らない有り様だ。それでも男だったことは覚えている。でもどうせだったらそこも忘れていれば、もう少し女の子っぽくなれたのだろうか?

 そんなことも考えたことがあったが、そのたびに今の私はこうだから仮定をしても仕方ないと思う。まあ女の子っぽいことは母さんには諦めてもらおう。


 そういえばたぶん前世とは違ったことがこの世界ではある。それがさっきまで私が唸っていた召喚獣だ。

 召喚獣。それはいろいろな設定があるが多くは、仲間として召喚したり一時的な大技を使うためだったりすることだろう。この世界でもそう多くは変わらない。


 まず1つ目、召喚獣を呼べるのは5歳以降で、召喚するのに才能はいらない。誰でも簡単に召喚できるのだ。理由は絵本によって違うが、偉い召喚士だったり神様が授けたとされている。真実はともかく、実際にこうして召喚獣を召喚できる印が手の甲まれている。転生したからといって印が刻まれなくてよかったとホッとしたのは内緒だ。


 次に2つ目、召喚する召喚獣は選べない。まあ選べないといっても、いきなりドラゴンなんて大物が召喚されるわけではない。基本的に幼体の召喚獣が召喚されて、召喚主と一緒に成長していく。成長方向は様々で、ドラゴンだとずうっと飛び回ってたらワイバーンのような飛行特化に成長していくらしい。


 最後に3つ目、召喚できる召喚獣は固定されて1体だけ。複数召喚できることはないし、やり直すこともできない。生涯に渡って続くパートナーが決まるのだ。そして召喚される召喚獣の種族によっては、戦闘系や生産系とか得意なことが変わる。それにありきたりなのかレアなのかも変わる。さっきも例に出したドラゴンは希少中の希少だ。それこそ召喚できるだけで貴族に召し抱えられるとか。


「(できれば私もドラゴンがいいんだけど、犬猫や猛禽類も捨てがたいんだよなぁ)」


 犬猫は一緒にいるだけで癒されるし、猛禽類はカッコいいのが身近にいるからわかる。というのも父さんの召喚獣が前世でいう鷹のストームホークで、母さんが猫でウオーターキャットだ。それぞれ属性名+種族名で表されている。

 そんなわけで、いまだにこれがいい! みたいな召喚獣はいない。でもできれば戦闘系の召喚獣が良いと思ってはいる。やっぱり戦うところが見てみたいからな。村の外にはモンスターがいるから危ないし。

 そうこの世界には魔物がいる。基本的に生物を襲うようで、気づいたら増えていたりして減ることはない。そしてこういう魔物を倒すことで戦闘系の召喚獣は成長していくのだ。


 そんなことを考えていると、もう少しで召喚獣を召喚できるという感覚がした。いよいよだが、両親に伝えておこう。


「もう少しで召喚できそうだよ」

「お、いよいよか!」

「できれば可愛くておとなしい子がいいのだけど」

「(できれば戦闘系の召喚獣でレアなのをお願いします!)」


 そんなことを考えつつ、召喚するときの作法をする。といってもそう難しいことじゃない。単純に膝を折って手を合わせて祈るだけだ。というか召喚獣が来てほしいという思いがあればいいらしい。まあ誰もが強かったり珍しい召喚獣が召喚されてほしいと思うわけで、そのためにこう祈ったら良い結果が出やすいなどの祈り方から、事前に料理を置いておくなど様々な方法が行われているという噂があったりする。

 これを聞いてまるで推しに来て欲しいガチャ廃人だと思ったものだ。まあ私の家は一般的な祈り方で、特別祈り方をしなくていいのはよかった。聞いた噂では絶対にやりたくないものもあったし。


 閑話休題。

 とりあえず膝を折って手を合わせて祈る。戦闘系の召喚獣、できればレアな召喚獣がいいと祈る。そうして祈っていると目の前に召喚陣がでてきた。ひとまず儀式が失敗ということはなさそうだ。

 そのまま祈っているとだんだんと召喚陣が多重に重なって見えなくなっていく。そうして最後に光ると、召喚陣は消えてなくなりその場には剣が残されていた。


「剣?」

「あーまじかー……」

「うっそー……」


 もしかしてこれが私の召喚獣なの? そんなことを思いつつ、私の後頭部には両親の何とも言えない視線が突き刺さるのだった。

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