破滅
マリエラ・ゴールドバーグ
第1話
昨晩大きな山場を越えた。するとすべてがどうでもよくなってしまった。こういうのを燃え尽き症候群、というのだろうか。
とにかく何もやる気が起きない。緊張の糸がぷつんと切れた感覚。
私はワンルームの床に大の字で寝転がった。
荒れた室内。いずれは片付けなければならないが、今は見ない振りをする。私はその視線を狭い天井から風呂場があるはずの方向へ移動させる。
昨晩は風呂に入れなかった。
あ、そうだ。銭湯へ行こう。
歩いていけるような近所に銭湯があるのは知っていたが、引っ越してきて以来一度も行ったことがなかった。特段必要を感じなかったから。
私は無意味に「うー」とうめき声をあげ、余計な時間をたっぷり使って立ち上がった。
外へ行くのは億劫ではある。しかしこの部屋に閉じこもっているよりは数倍もましだ。
時刻は午前10時。平日。いつもならもうとっくに勤務中だ。しかし今日は休んだ。有給休暇でも公休でもない。
無断欠勤。
これまで無遅刻無欠勤だった私だが、今日はそれももうどうでもよかった。
低い天井に向かって大きく背伸びをし、小さなボディバッグに貴重品を入れ、バスタオルと着替えをトートバッグに詰め込んだ。
ボディソープの類は備え付けがあるだろう。もしなくても番台で販売しているだろうから持って行かないことにする。
「じゃあ、いってきます」
無意味な挨拶を虚空に放ち、玄関にしっかりと鍵を閉める。
それから銭湯へ向けてだらだらと歩いた。
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