第1話

 太陽の光が木々の間からこぼれ落ちる。


 夏とはいえ、やはり山の中は暑さを凌ぐにはちょうどいい。 

 それでも長いこと山道を歩いていれば、うっすらと額に汗が浮かびあがる。


 麓から歩いて3時間後、ようやく目的地へと到着した。


 平坦で開けた場所。

 空を仰ぎ見ると、雲一つない青空が広がっている。

 

 高木こうぼくがないせいで、ここには日陰になるところがない。

 太陽の光が降り注ぎ、体温が上がってくる。

 

 とりあえず、撮影地として問題なさそうだ。

 明日に備え、今夜はここで夜営すると連れの助手に言う。


「本当にこんな場所でいいんですか? あちら側のほうが撮影場所としてはいいような……」

「いいんだ、ここで」


 数百メートル離れている場所から視線を戻した助手は、あからさまに怪訝な表情だ。

 でも助手の言うことは間違っていない。


 助手がいう『あちら側』とは、俺たちの場所からも見える岩場のことだ。

 あっちの場所のほうが撮影には適していると、俺のプロとしての勘も言っている。


 だから自分を言い聞かせるように助手に言う。


「明日になれば、分かる」


 俺たちのいる所は、がベストポイントと決めた場所。

 本来であれば、言い出しっぺのアイツも一緒に来る予定だった。


「それじゃ、準備しますね」


 助手が背負っていたリュックを降ろし、夜営の支度をし始める。


 明日の朝、150年振りの奇跡と言われている自然現象を、この山から撮影する。

 アイツとの約束を果たすために。

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