第8話 執筆と自分の内面との対話

執筆は、ただ言葉を並べる行為ではありません。それは、自分の内面と対話をする時間でもあります。自分の考えや感情、時には隠れていた本心さえも、言葉として表面に引き出すことができるのが執筆の醍醐味です。この過程で、自分のことをより深く知り、自分に素直になることができます。


書き始めた頃、私は「何を伝えたいのか」「何を書きたいのか」が曖昧でした。周囲の期待や評価に影響され、言葉がどこかよそよそしく、空虚なものに感じられることも多かったです。しかし、書くことを続けていくうちに、作品を通じて自分自身と向き合い、自分の本心が少しずつ見えてくるようになりました。


言葉を紡いでいく中で、自分が何を感じているのか、何に価値を見出しているのかがはっきりと浮かび上がってくる瞬間があります。例えば、悲しい出来事や迷いの中で書き出した言葉が、自分にとっての支えや慰めとなることもあります。その時初めて、「これが私の本音なのだ」と実感することができるのです。


内面と向き合い、自分の本心を見つめることは時に辛く、逃げたくなることもあります。しかし、その過程を通して、創作が単なる自己表現ではなく、自分を知るための旅になるのだと感じるようになりました。書くことで見つかる自分の姿、自分の弱さや強さ、そして本当に大切にしているものが、作品に少しずつ宿っていくのです。


執筆は、自分自身を知り、成長させてくれる行為でもあります。言葉を通して自分と対話し、真の自分に気づくことができる――それこそが、創作の醍醐味であり、自分にとっての書く意義だと感じます。誰かのためではなく、自分のために書く時間を大切にし、自分と向き合う対話をこれからも続けていきたいと思います。

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