第28話:試乗する松平先輩
「えええ??僕が決めるんですか??」
「だって、色んな性能については、私ではちんぷんかんぷんですし…」
「じゃあ、店長、まずはこの2台の試乗は…」
言い終わる前に店長の許可が出る。
「松平さんにはここに居てもらって、2台ともここの前まで持ってこようか。浅見くんも手伝って」
と店長。
2人でカフェスペースの前まで持ってくると店長がサドルの高さを調整しはじめた。
「聞かなくてもわかるんですね」
「長年やってるからね。おおよそは合わせられるよ」
店長が言いながらテキパキ調整していると、まだ呼んでもいないのにカフェスペースから先輩が待ちきれない様子で出てきた。
「松平さん、浅見くんに補助してもらいながらこの子に乗ってみて。その間にこっちを調整しとくよ」
スラッと長い脚を上げてサドルに座る松平先輩。今日は珍しくデニムパンツなんだと思ったけどそういうことだったのか、とひとりで納得する。
「どうですか乗り心地は?」
「久しぶりに自転車に乗るからちょっと怖いですね」
「僕がささえていますから大丈夫です。ハンドルやサドルのフィット感はどうですか?」
「うん、違和感ないです」
ほんの少し進んでみましょう。とサドルの後ろ側を持つ手に力を入れる。
う、うん。とペダルを回し始める先輩。
思ったよりスムーズに乗れているな。
先輩、運動神経は良いのかも。
「どうです?重さは感じないですか?」
「うん、ありがとう。重さはわからないかな?
マウンテンバイクってこんな感じなんですね」
「では、あちらも調整できたっぽいですから乗ってみましょうか」
「うん。優雅くん、この子をお願いします」
と言ってしなやかに降り、店長が調整していたもう1台の方に走っていく。
いい機会だから僕もこの子の試乗しちゃおう、と跨って後を追う。
もう1台の別の子に乗り終えて、先輩は目をキラキラさせながら、
「この子は軽いですね!可愛いですし、乗り心地もこの子の方が良いです」
気に入った様子。
「日吉店長さん!この子の他のカラーリングも見たいです。さきほどのカタログ頂けませんか?」
テンションも高い。
「良いよ〜、どうぞどうぞ。とりあえずカフェスペースに戻って、じっくり見るといいよ。スタッフに紅茶のお代わりを言っておくよ」
と満足気な表情で事務所に入っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます