第9話:♡ってなに!?

時計を確認すると思っていたより時間が遅かったので、冷凍しておいた野菜の端切れをレンジで解凍して、その間にお湯を沸かし顆粒のコンソメを入れ、解凍出来た端切れ野菜も投入し火を通す。


いったん火を止めて、これまた冷凍しておいたごはんを解凍して、その間にフライパンにバターを入れて熱し、コップの中で気持ちだけコンソメスープを入れた生玉子を溶く。

 

ピーッ


電子レンジがご飯が解凍出来たよ!と合図をくれたので、急いで取り出して、フライパンに玉子を投入。間髪入れずにご飯も投入。卵の縁が固まりつつあるので火を止めフライパンの前方にたまごが破れないようにご飯をスライドさせて…


「よっ!」

とフライパンをはね上げ玉子をひっくり返す。あとは形を整えて…

 

(味付けしてないただの白飯でもオムライスってことでいいのかな?)


一瞬頭をよぎったけれど、自分一人で食べるだけなので気にしない。

さっとフライパンとご飯や野菜を冷凍していたタッパーを洗い終えて、

 

(いつもケチャップをかけるだけだけど今日はオーロラソースにするか)


コンソメスープ温め直しながらっと、

小皿にケチャップ5、マヨネーズ3、ウスターソース1…、

そして100均で買ったこれ!

 

「ジャジャーン!たらこペースト!」

 

初めて見るからつい手が伸びちゃったんだよなぁ。たらこの味がどのくらいするのか楽しみ!

 

適量をチューブから出してかき混ぜて完成。

コンソメスープもひと煮立ちしたようなので、先ほど玉子を溶いていたコップを再利用して、スープをそこに注いで、本日の晩ご飯の出来上がり!

 

「スープは余っているけど明日の朝に食べればいいや」


テーブルにランチョンマットを敷いて、オムライスとコンソメスープ、木製スプーンを置く。出来栄えに満足した僕はスマホで写真を一枚パシャリ。


「いただきます!」

先ずはスープを一口。続いてオムライスにスプーンを入れる。

 

「おお、んまい!上手くできた。ふわりとしているし、バターの風味もいいな。何よりこのオーロラソース当たりだわ!たらこの味は思ったよりイマイチだけどほのかにする」


自画自賛しつつ食べていると、スマホからLINEメッセージの通知音がした。

画面を見ると夏夜さんがアルバムを開始しましたとある。

 

(松平先輩だ、アルバム?なんだろ?)

 

画面を開くと一枚の美味しそうな料理写真。


そこにシュポっと追加音。


『今日はポークソテーとサラダにしました♡』


んぐっ、

喉を詰まらせかけて慌てて水を飲む。


♡ってなに!?

しかもこの可愛いしかない写真はなに!?

花柄をモチーフにした上品で高価そうな素材のテーブルクロスに、おそらくこれもどこかのブランド品であろうランチョンマット。

そして、猫柄のお茶碗、猫柄の箸、ぐで〜と寝そべった風の猫の箸置きに、ハート柄があしらわれたお皿。

野菜は透明なガラスボウル。これは紫切子かな?

とにかくオシャレと可愛いが画面に溢れている。


映える写真というのはこういう事なんだろう。それにしても何もかもが可愛くて語彙力を失う。何より先輩のプライベートの一端を垣間見ている現状にテンションが爆上がりする。


『いかがでしょうか?』

追いLINEが来た。


あ、既読のまま!

 

「いや、ごめんなさい先輩。既読無視じゃないんです!」

と叫ぶも電話では無いので聞こえるわけがなく。


『すごく美味しそうです!』

メッセージを返し、

続けて『お目汚しになるかもしれませんが』とアルバムに先ほど撮った写真を追加する。


速攻で返事が来る。

 

『ありがとうございます!

浅見くんはオムライスだったんですね!

とても美味しそうです♡♡

この上にかかっているオーロラソースも自作ですか?

良かったら今度レシピを教えて下さい』


「だ、だからさっきから♡はなに!?しかも数が二つに増えているんだけど!!」

童貞丸出しの反応をしてしまうが、これメッセージのやり取りだから声に出してても助かってるよね?


『このオーロラソースは自分的にはアリだと思います。改良の余地がまだまだありますが。

松平先輩のポークソテーもすごく美味しそうです。ソースのコツがあればご教授下さい』

と返す。


『かしこまりました。

お風呂を出てからでもよろしいでしょうか?』


(え?お風呂?先輩の…)


と、ふたたび童貞丸出しの妄想にトリップしかかるもなんとか堪えて


『了解です』

とかろうじて返す。

既読がつかなかったので食べ終わって片付けているのか、お風呂に行ったのだろう。


ご飯を食べる手が止まっていたことに気がつき、超スピードで残りを胃袋にほうりこんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る