第四話 君と星空を I Wish U Heaven 2 ②

 紙木城の両親がどんな人だったか、おれは知らない。だがこの親は子供が失踪して、しかも学校に疑いをかけられて、それでなんの抗弁もしなかった。紙木城は不在のまま、強制退学処分を受けそうになった。

 そのとき、一人の男子生徒が「その彼女の相手はおれだ」と言いだして、学校中が大騒ぎになった。

「彼女は浮浪者なんか連れ込んではいない。だから退学処分は取り消せ」と主張したのだ。

 教師たちは、むろん全然信じようとはしなかった。しかし生徒が騒ぎ立てるので、事を収めるためだけにその男子生徒を停学にして、紙木城の処分は取り消した。

 けっきょく紙木城はそれから姿を見せずじまいで、卒業にも単位が足りないというので放校処分になった。

 なんだったのかというと、なんでもない。つまらない事件だったということだろう。その男子生徒はこの騒ぎのせいで大勢いたガールフレンド全員に三行半を突きつけられて、みじめに皆に振られた。

 馬鹿なヤツである。ほんとうに。


「……いや、紙木城が誰と会っていたのか、知ってたよ」


 おれは薄笑いを浮かべて宮下に言った。


「噓つけ」

「いや、マジで」

「誰よ? あんたを見捨てたようなクズは」

「宇宙人さ。彼女はそいつに連れられて天に昇っていったんだ」


 言った途端に、ぱん、といい音が店中に響いた。

 宮下が、おれの頰を思いっきりひっぱたいたのだ。


「いい加減にしなさいよ! 男のくせにいつまでも未練たらしくてさ!」


 本気で怒っていた。しかし彼女は別におれに気があるとかそういうのではない。単に、こーゆーヤツなのだ。


「……わりい」


 おれは苦笑しながら頰をなでた。

 ……しかし、今言ったのはあながち冗談ではなかったのだ。紙木城本人からの受け売りなのだった。

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