ニート探偵

@gooorilla

第1話 ニート探偵



 頭の中でジリジリと導火線の短くなる音がする。焦る気持ちとは裏腹に身体は重く、海に沈む鉛のような不自由さに支配されている。とおるは一人暮らしをしている部屋のソファベッドから起きられなくなっていた。別に身体に不自由があるわけでは無い。ただ脳の信号を身体が拒否している、そのような感覚だった。このまま導火線の火を焦る気持ちで待つよりも、いっそのこと眠ってしまえばいい。そう考え、唯一動く瞼を閉じようとしたその時、ヴーヴーとバイブレーションの音が響いた。これは頭の中だけで鳴っている音では無いようだった。寝転がったまま手探りで、枕元にあるはずのスマートフォンを探す。いくつかのリモコンを落としながらスマートフォンを見つけ、充電ケーブルから外した。もう、バイブレーションは相手が諦めても良いぐらいの回数鳴っていた。どうやら諦める気は、最初からないようだ。スマホカバーの磁石を外し、バスの定期券入れとなっている部分を開く。非通知だ。誰かわからない番号から電話がかかってきていた。通常、そのような番号からの電話を取ることは無いと思うが、透は事情が違った。すぐに画面の応答ボタンをスワイプすると慣れた口調で言った。

「お電話ありがとうございます。こちらニート探偵事務所でございます。」


 


 

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