第2話 画商。


 彼女の作品に驚き、そして誇りに思った。

 だから、彼女の作品を有名な画商のところに持ち込んだ。

 彼女の制止も聞かずに。


「は? 貴女、私をおちょくってるのですか?」

「ええっ!? あなたこそこの目の前の傑作が見えないんですか!?!?」

「ままま待って、"わたし"! 落ち着いて! この人が言ってることが正しいよ! この絵は、"わたし"の頭の中にしか存在しないんだよ!」

「……はぁあ〜!? な、何言って――」

「…………出口はアチラですよ」


 結論から言うと、彼女の言う通りで、彼女の描いた絵とキャンバスはわたしの頭の中にしかない「妄想」の類いと同列ということだった。

 そして、ちなみに彼女自身もわたしにしか見えていない……ということだった。


 そういえば、確かに彼女、わたしの元に帰ってきてから、何も口にしてなかったけ。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る