超巨大宇宙船が落ちて来てから十八年が経ちました

なつのさんち

001:宇宙船が落ちて来てからの十八年間のお話

「……報復を受けた国々は、正式に宇宙船『神州丸しんしゅうまる』への攻撃を認めた訳ではない。

 が、各国からミサイルが発射された事は我が国を含む多くの国々が確認しており、神州丸所属の外交大使の発表も合わせて、おおむね事実であると認識されている」


「先生ぇ~、それっていわゆる沈黙の三日間ってヤツですか~?」


「その通りだ。

 今から十八年前、宇宙船が日本領海内に不時着した事から、日本が世界に先駆けて宇宙船『神州丸』と国交を樹立する事が出来た訳だが、それが面白くなかった国々があった訳だ。

 まぁ何やかんやあって、その国々が宇宙船に対して攻撃をし、神州丸の自動報復システムが作動したんだ」


「自動報復システム? それってつまり、外交大使のお姉さんが意図して攻撃し返した訳じゃないって事ですか?」


「そうだ。外交大使が宇宙船の全権を掌握しておれば、今現在も日本海沖に神州丸が停泊したままにはならんだろう。

 彼らの科学技術力からしたら、地球文明など立ち寄る価値もないレベルだ。実際にミサイルは神州丸に到達する前に無力化されて、太平洋沖に沈められた」


「神州丸の攻撃方法は電磁パルス攻撃なんですよね?

 電子機器なんかを破壊する事で、社会インフラを無力化したってテレビで言ってました!」


「その通りだ。

 社会インフラと言うと分かりにくいが、電気を使って動く物全てを内部的に破壊したそうだ。

 非常に恐ろしいのが、ミサイルを発射した軍事基地だけでなく、攻撃命令を下した司令本部も報復対象となった事だ。

 誰が命令したかが瞬時に悟られた訳だ。そして司令本部がある場所というと、神州丸を攻撃した国の首都となる。

 ミサイル攻撃のように、大きな爆発などが起こらない事から、電磁パルス攻撃を受けた都市以外では報復攻撃を観測する事は出来なかった」


「攻撃を受けた都市は電気も水道もガスも使えなくなったんだよね? で、あちこちで火事やら爆発やらで滅茶苦茶になっちゃったんだよ!」


「電子制御出来なくなった自動車が事故を起こしまくってせいで、まともに救助活動も出来なかったらしいね~」


「現地との通信が止まった事で異変に気付くのは早かったが、状況把握が出来ないせいで救助活動が間に合わなかった。その為、多くの人々が亡くなってしまった。

 のちに、神州丸は世界各国からその責任を追及されるが、受けた攻撃に対する報復である事と、防衛システムを外交大使が掌握出来ていない事を理由として、責任を負う事はなかった」


「日本政府は真っ先に神州丸への擁護声明を出したんですよね?」


「神州丸は日本領海内に停泊している。ミサイルでの攻撃は、日本への戦争行為であると主張する事も出来るのだから、神州丸を擁護するのは当然と言えるだろう」


「だから日本は神州丸との唯一の同盟国になれたんですねぇ」


「いや、順番が逆だな。日本が神州丸との同盟条約を締結した直後に攻撃があったんだ」


「えっ、それってもう本当に戦争じゃん。日本としても報復しなきゃじゃん」


「日本政府としては即座に世界各国に攻撃を受けた事を発表し、攻撃して来た国々に対して非難声明を発表し、報復も辞さないと示した。

 が、当の本人である国々から何の音沙汰もないまま丸一日が経過し、各国が神州丸から報復を受けていた事が判明するまでさらに二日掛かったという事だ」


「なぁなぁ、今さらなんだけど何で宇宙船の名前が日本語なんだ?」


「ホントに今さらね……。

 外交大使のお姉さんが最初に接触したのが日本人の漁師さんだからよ。漁師さんとのコミュニケーションの中ですぐに日本語をマスターして、宇宙船の名前からシステム制御系言語から内部施設まで全部日本語に変換してしまったのよ。

 テレビ見てたら知ってるでしょう、普通」


「いや、オレん家はじいちゃんばあちゃんが反インプラントだから……」


「あぁ……、そういう番組を見せてもらえないのね。ゴメンなさい」


「先生ぇ、外交大使のヒューマノイドから報告はなかったんスか?」


「あぁ、神州丸の自動報復システムが作動した事を把握したのも、報復から三日後だったと言われている」


「でもあのお姉さんは神州丸が攻撃を受けた事はすぐに分かったはずよね?

 じゃあ自動報復システムが作動するであろう事も分かっていたと思うけど。

 何か、おかしくない……?」


「疑問に思うのは当然ではあるが、相手は同盟国であるとは言え他国であり、たまたま日本へと不時着して来た宇宙人だ。

 もっと言うと、外交大使の彼女はヒューマノイドであり、人間ですらない。何を考えているかなど、我々地球人には分からんよ」


「え~? お喋りしたけど素敵なお姉さんだったよ~?」


「……藤沢はもうインプラント埋入手術を受けたのか」


「うん! めっちゃ良いよ、先生を手術受けたら良いのに~」


「地球人の人体に影響を及ぼすかどうかは、今までの十八年間で結果が出るものじゃない。

 すでに受けている者も多いのだろうが、まだ受けていない者は今一度、よくよく考えてほしい」


「でもでも~、神州丸と同盟を結んだお陰で日本は科学技術がすっごく進んだんでしょう?」


「それはそうだし、もちろん先生もその恩恵にあずかっている。今やなくてはならない技術も数多い。

 でも、さっき言ったように彼らは地球外文明であり、ヒューマノイドだ。地球人類とはまた違った倫理観や行動原理があるかも知れないと、常に頭に置いておいてほしい」


「でもそれって地球人類だって同じですよね?

 日本に何の断りもなく、日本領海にある宇宙船に対してミサイル攻撃をするような国が、複数もあったんだから。

 倫理観も行動原理も理解出来ないんですけど」


「八田の言う事はもっともだ。

 宇宙船のダンジョンから採掘される資源は、世界の今を支えているし、未来も示してくれている。神州丸から提供される化学技術も素晴らしいものばかりだし、私達の暮らしはどんどん良くなっていっている。

 そして、日本は神州丸とダンジョンからの恩恵のお陰で、世界に一歩も二歩もリードする事が出来ている。

 ただ、先生はみんなに、常に違和感を見逃さないようにしておいてほしいと思っているんだ」


キーンコーンカーンコーン♪


「おっと、もう時間か。

 今日やった内容は全部テスト範囲だから、ちゃんと復習しておくように」



★★★ ★★★★ ★★★



初めまして。あるいはお久しぶりです。

前作「Vから始める男女比一対三万世界の配信者生活:オタク文化で並行世界を制覇する!」をお読み頂くとよりお楽しみ頂ける作品となっておりますので、URLを貼っておきます。


https://kakuyomu.jp/works/16817330668498971075


両作品ともブックマーク・評価を頂けると非常に嬉しいです。

よろしくお願い致します。

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2024年11月25日 12:02
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超巨大宇宙船が落ちて来てから十八年が経ちました なつのさんち @natuno3ti

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