第3話 奴隷決定
「おっと、新顔だな」
扉を開けて掃除していたから廊下から部屋の中が丸見えだ。
話し掛けてきたのは俺と同年代の奴だ。
ぽっちゃりしているが、背丈は俺より高い。
デブは優しい奴が多いが、こいつの目つきは気にくわない。
「こんにちは。ラウドだよ」
「おう、俺はサカズム。お前、スキルの数は?」
「ひとつ」
サカズムの目つきが俺を軽蔑する物に変わった。
「スキルのランクは?」
スキルのランクはFからSまで決められている。
念話は当然Fだ。
「Fだ」
「家名は?」
「リスナー」
「あの貧乏男爵家か。ザコだな。お前、奴隷決定な」
「くそっ、いきなりなんだよ」
「生意気な目だな」
サカズムは、いきなり殴ってきた。
12歳の子供とは思えない強さだ。
俺は壁に叩きつけられた。
「ぐはっ!」
息が詰まる。
スキルを使いやがったな。
身体強化系だとみた。
「これに懲りたら素直に従うんだな。これは授業料だ」
そう言うとサカズムは俺のポケットから財布を抜き取った。
くそっ、なんて糞な世の中だ。
夕方になったので食堂に入る。
トレーに料理が盛られた。
俺はそれを持って歩く。
トレーで足元が見えなかったのが良くなかった。
足を引っ掛けられた。
サカズムの野郎が笑っている。
足を引っ掛けたのは恐らくサカズムの取り巻きだな。
くそっ、気を取り直して料理をまた貰いに行く。
「お前、さっき貰ったよな。駄目だ、お替わりはなしだ」
くそっ。
「転んだんだ」
「転んだお前が悪い。騎士が戦場で転んで食事を駄目にしましたお替り下さいなど言ってみろ。厳罰だ。反省しろよ、飯抜きだ」
厳しいな。
まあ、騎士を育成する機関だからな。
サカズムに殴りかかりたい。
だが、返り討ちだろうな。
我慢だ我慢。
部屋に戻り、すきっ腹を抱えて眠っていたら、扉が叩かれた。
消灯時間はまだだが、眠い。
「サカズムさんが、小腹が空いたとよ。何か買ってこい」
くそっ、今の時間の外出は禁止されている。
買えないなんて言ったら、ボコボコにされるんだろうな。
くそっ、仕方ないので、抜け道を探す。
「にゃー」
猫がいる。
念話。
『抜け道を知らないか?』
『知ってる』
猫に案内された抜け道は一見壁があるように見えて、穴が開いてて、木で穴が隠されている。
きっと、昔の在校生が作った穴だろう。
小柄な人でないと通れない穴だ。
大人は無理だな。
俺は通れそうだ。
穴から夜の街に出る。
酒場でパンとソーセージを買う。
俺の分も買いたかったが金がない。
それをもって学園に戻った。
サカズムの部屋の扉をノックする。
使用人と思われし人が開けてくれた。
「夜食を持ってきた」
そう言うと奥からサカズムが現れた。
「ほう、どうやったんだ?」
抜け道は秘密にしておきたい。
「食堂の料理人に無理を言って作らせた」
「こんな不味そうな物が食えるか」
そう言うとサカズムはパンとソーセージをゴミ箱に捨てた。
くそっ、捨てるなら俺にくれよ。
「お金は?」
「依頼、失敗だ。払うわけない」
くそっ。
殴りかかりたい。
だが、大人しく引き下がった。
それしかないだろ。
殴りかかったら、きっと何倍もになって返ってくる。
ああ、糞だ。
俺はサカズムの部屋を出て、抜け穴を通って街に出た。
冒険者ギルドへ。
冒険者ギルドは儲かっているようで、街の一等地に建っていた。
立派な剣の意匠の看板が掲げられている。
所詮、職業あっせん所みたいなものだろう。
緊張する必要もないな。
24時間営業で助かった。
入口を入るとさっそく絡まれた。
「がはは、いつからここは子供が出入りするようになったんだ。帰ってママのおっぱいでもしゃぶってろ」
「口減らしで後がないんだ」
俺は嘘を付いた。
喧嘩してもやられるのが目に見えている。
同情を誘う作戦に出た。
「おう、すまねぇな。てっきり街の子供が紛れ込んだと思ったよ」
「分かってくれればいいさ」
「坊主、見かけによらずしっかりしているな。大物になるかもな」
「とりあえずの将来より、まずは日々暮らして行きたい」
「頑張れよ」
カウンターにいるお姉さんに話し掛ける。
「登録したいんだけど」
「字は書ける?」
「書けるよ」
「それじゃ、これに書いてね」
用紙を渡された。
名前、年齢、レベル、特技、スキルを書く所がある。
特技はなんて書こう。
これと言ったものはないな。
そうだ子守はどうだ。
念話なら赤ん坊の考えていることが分かる。
おしめか、おっぱいかの判別がつくだけでも仕事にはなる。
「ぷっ、あははは。ひーはー、く、苦しい。特技、子守り」
用紙を出したところ、受付のお姉さんはぷっと吹き出した。
そして笑い転げた。
子守なんて書く人はいないのは分かる。
笑うことはないのに。
「ふははっ、この魔道具に手を置いて。ぷははは」
「もう、笑い過ぎだって」
言われた通りに魔道具に手を置いた。
魔力量が表示され、金属のカードが出てくる。
カードにはFランクと記されていた。
もらった金属のカードには、紐を通す穴があるから、後で首にぶら下げるようにしよう。
さあ、稼ぐぞ。
食わないことには眠れそうにない。
それに寮に帰るとまた起こされて用事を言いつけられそうだ。
それは嫌だ。
よし、初依頼だ。
俺は気合を入れた。
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念話無双~スキルランク差別がある世界で、最弱ランクの念話スキルを授かった。極めた念話の最強精神攻撃でざまぁする~ 喰寝丸太 @455834
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